粋な提案

ピュア過ぎてアブノーマルなヤツらが繰り広げる妄想と葛藤。
ヘンなところが心地いい５つの物語。
天然女子高生と気弱なストーカーが繰り返す、
週に一度の奇天烈な逢瀬のの行き着く先は――？(「金曜のバカ」)
ちょっと変でかわいい短編小説集。

読後爽やかでキュートな作品を書いて来た著者が、魅力的な個性をついに顕在化。
道で出会った女子高生を「運命の女性」と思い込み、つきまとう引きこもり君。
重度の恐竜オタクであることを好きなコにひた隠しにする男の子。
彼女と泊まりがけで東京に行くことになり妄想を膨張させる高一男子。
いずれも思い込みが強くて、一所懸命なあまり結果的に暴走してしまう子ばかり。
その空回りっぷりに笑わされながらも、男子の中にある共通点を見つけたりして、
収録されている５本の短編の主人公の想いもあり、妙にリアルで切ない小説集です。
個人的には、女子高生とストーカーの奇妙な交流を描いた表題作が好きです。
主役の二人のキャラクターを始めとして幾つもの「小技」が盛り込まれています。
あれよあれよという間に「ありえない展開」に引き込まれてしまいました。
ラストまで読むとちゃんと彼等の成長の物語になっていることに気付いて驚きます。
話の終わった後の展開も想像させて後味がいいです。
読んでいると「ほっこり」とした気分にさせてくれる作品ばかり。
ユーモアだけでなく「仕掛け」や「サプライズ」が巧く散りばめられていて、
どのお話も派手さはありませんが楽しめること請け合いです。
ちゃんと落とし所を心得た結末になっていて気持ち良く読み切れます。
懲りない「金曜のバカ」越谷オサムさん、これからも楽しみな作家さんです。
目次・金曜のバカ／星とミルクティー／この町／僕の愉しみ彼女のたしなみ／ゴンとナナ

金曜のバカ 越谷オサム

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「金曜のバカ」越谷オサム