小田急線・世田谷代田駅から徒歩五分、築ウン十年。空き室あります!
安譜請ですが、人肌のぬくもりと、心地よいつながりがあるアパートです。
うまい、深い、面白い。三拍子揃った会心作。
安普請極まりない全六室のぼろアパート・木暮荘。現在の住人は四人。
一階には、死ぬ前のセックスを果たすために恋を求める老大家・木暮と、
ある事情から刹那的な恋にのめり込む女子大生・光子。
二階には、光子の日常を覗くことに生き甲斐を見いだすサラリーマン・神崎と、
3年前に突然姿を消した恋人を想いながらも半年前に別の男性からの愛を受け入れた繭。
その周りには、夫の浮気に悩む花屋の女主人・佐伯や、
かつて犯した罪にとらわれつづけるトリマー・美禰、繭を見守る謎の美女・ニジコたちが。
一見平穏に見える木暮荘の日常。しかし、一旦「愛」を求めたとき、
それぞれが抱える懊悩が痛烈な哀しみとしてにじみ出す。
それを和らげ、癒すのは、安普請であるがゆえに感じられる人のぬくもりと、
ぼろアパートだからこそ生まれる他人との繋がりだった……。
目次・シンプリーヘブン/心身/柱の実り/黒い飲み物/穴/ピース/嘘の味
木暮荘っていうおんぼろアパートの住人と、住人に関わる7つの物語。
現代人の孤独や愛情の形を木暮荘を舞台に、オムニバス形式で描きます。
木暮荘の住人が自分のこと、他の住人のことを書いているという形式です。
三浦しをんさんが得意とする洒脱な会話と綿密な構成が魅力を放っています。
短編ごとに主人公が代わる連作で、それぞれの物語はリアルでコミカル。
個性豊かでちょっと引いてしまう行動が多い、登場する人たち。
でもそんな人いるいる。そして人ってやっぱり嫌いにはなれないかなって思えます。
リンクしあう、愛おしくおかしな7人のそれぞれの人生。
皆何らかの、繋がる事に一生懸命になっているキャラクター達です。
今日を生きてゆくのに必死なと言い換えられそうな、そんなふうに読みました。
それぞれ気にしてなさそうで気にしているということがわかります。
笑いあり、涙あり、切なさあり。まさかこの人が!というドッキリもありました。
木造アパートの小暮荘が醸し出す雰囲気と登場人物達の心の奥にある感情。
そのふたつが響き合う文体がとても心地好かったです。
安普請の古い木造アパートだけど私も住んでみたいなと思いました。
クセのある人たちばかりで楽しそうなので。そしてみんなと仲良くしたいです。
「木暮荘物語」三浦しをんさんの明るく軽くサクサクっと読めた1冊です。

楽天からも購入できます。
「木暮荘物語」三浦しをん
「木暮荘物語」三浦しをん
TBさせていただきました。よろしくお願いします。