敗退を続ける野球部グラウンドからベースが盗まれた。
後日、練習試合中に、野球部監督が死体で発見される。
混迷をきわめる事件に、お気楽探偵部員3人組が首を突っ込んだ。
しょうもない推理合戦の先に待つものは…?
のんきを絵に描いたような鯉ヶ窪学園。
敗退を続ける野球部グラウンドからベースが盗まれてしまう。
オレ(=赤坂通)が唯一の下級生として在籍する探偵部員の総力を結集しても謎は解けない。
後日、野球部とライバル校との練習試合終盤に事件は起きた。
白昼堂々、球場で発見された野球部監督の死体に騒然となる両校関係者と捜査陣。
動機は不明、球場ではアリバイ実験も行われるなど混迷をきわめる事件に、
オレたち探偵部三人が事件に首を突っ込んだ。しょうもない推理合戦の先に待つものは…。
私立鯉ヶ窪学園探偵部シリーズの第二長編は野球を題材にしたミステリです。
鯉ヶ窪学園の弱小野球部のグランウンドから、なぜかベースが盗まれる。
さらに後日、ライバル校の球場で行われた練習試合終盤に事件が起きた。
球場に姿を見せず、連絡もつかなかった鯉ヶ窪学園の野球部監督が、
球場のバックスクリーン付近で、死体となって発見されたのだ。
死体の傍らには、盗まれたホームベースが置かれていたのだが、
これに続く第二、第三の事件の際にも、盗まれたベースが現場に残されていた。
そうした不可解な野球見立て殺人に、探偵部の三人が首を突っ込むのだが……。
登場する探偵部の三人のやり取りや随所にちりばめられた小ネタ、
語り部の言葉などにユーモアミステリの作家さん特有の笑いどころが満載。
しかもさりげなく狙いすぎの感じがないので自然とニヤリとさせられます。
球場全体を利用した大がかりなアリバイトリック。舞台の見取り図が出てくるので、
説明だけではちょっと難しいトリックもよくわかるようになっています。
地に足がついた現実的なところが好印象です。
どうしても容疑者が限定されてしまうという部分もあるのですが、
別の仕掛けによって、筆頭容疑者に容疑をかけにくくしているのが周到です。
まさかというか、そういうトリックなのかと驚かされ、素直に感心しました。
またシンプルながらミスリードなど細かいところもよくできていて、
作中の探偵部トリオ同様にすっかり騙されてしまいました。
不自然になりがちな見立ての動機にも無理がなく納得できます。
盗まれたベースをしっかり使い切る手順を作りだしているのも素晴らしいです。
複数のトリックが有機的に組み合わされることで、読者を巧みに誤導しています。
作者特有のベタなギャグが全編に溢れているため、読み始めは誤解されるかも。
軽妙なだけの作品と思われそうですが、なかなか骨太な本格ミステリなのです。
また野球を前面に押し出した内容ですが、野球に関する知識がなくても大丈夫です。
「殺意は必ず三度ある」東川篤哉さんのユーモアもミステリも楽しめる作品です。
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「殺意は必ず三度ある」東川篤哉
そちらのコメント欄が閉じられているため、ここに書いておきます。
10月末までに正しく届かなければ、削除いたします。