江戸で小間物商を営む佐一郎・お志津の若夫婦は、
箱根湯治の帰途、雨のために戸塚宿で足止めになった。
そして、やはり足止めの老女との相部屋を引き受ける。
不機嫌なお志津をよそに、老女の世話を焼く佐一郎。
その夜、風の音に混じって老女のすすり泣きで目を覚ました佐一郎に、
老女が語り出したのは、五十年前の奇怪な出来事だった…。
表題作はじめ6篇を収録。
収録の「お文の影」では、『日暮らし』の
岡っ引き・政五郎とおでこの三太郎が謎を解き明かす。
また「討債鬼」では、『あんじゅう』の青野利一郎と悪童たちが奮闘するなど、
他のシリーズの登場人物たちが縦横に活躍する傑作集。
「坊主の壺」「お文の影」「博打眼」「討債鬼」「ばんば憑き」「野槌の墓」六篇収録。
おでこと政五郎コンビや青野利一郎のおなじみの人物が出てくるのもファンには嬉しい。
最初の二編ではホラーより妖怪をモチーフに人情の機微を描いた幻想小説の趣きでした。
しかし三編目は妖怪が前面に。可愛い者達が活躍する宮部作品には珍しいアクション物。
後半の三編には怖さを秘めた怪談の恐ろしさに肌が粟立つ感じで、ぞくぞくしました。
「妖怪」という共通項を持ってはいますが、各編がバラエティに富んだ作品集。特に
子供の感情が生き生きと描かれていることが、宮部作品ならではで、相変わらず上手。
「博打眼」では、七つになる近江屋の娘、お美代のおしゃまさんぶりに、
「討債鬼」では利一郎を助ける金太、捨松、良介の三人組の腕白小僧ぶりに、にこにこ。
妖怪が跋扈する「博打眼」よりも表題作の「ばんば憑き」こそ実は最も怖い作品。
「最も恐ろしいのは人の心である」という名言そのままに、本編を良く表しています。
それぞれの物語は、人の心の奥にひそむ悪意にさまざまな形で妖怪が絡むのですが、
総じて善意の人々にはそれなりのハッピーエンドとなっているのが良いところです。
人の心、欲が織りなす闇から生まれた悪事を残酷なまでに描き出しながらも、
同時に、人がそれを乗り越えていく「癒し」も紡ぎ出されて温かさが心に残る読後感。
「ばんば憑き」宮部みゆきさんの恐ろしくそして暖かい、人物描写に優れた短編集です。
「ばんば憑き」宮部みゆき
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図書館で借りた宮部みゆき先生の「ばんば憑き」を読了。
江戸時代の怪異を題材にした短編集で、それぞれ関連の無い独立した「坊主の壺」「お文の影」「博打眼(ばくちがん)」
江戸時代を舞台とした、なにがしか怪異と関わりのある短編小説集になります。
『日暮らし』の政五郎親分とおでこさんが登場する物語があったり、『あんじゅう』の青野利一郎と悪
「ばんば憑き」宮部 みゆき角川書店 ISBN:978-4048741750 あれ
ばんば憑き
宮部 みゆき
角川書店(角川グループパブリッシング)
発売日:2011-03-01
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 湯治旅の帰途、若夫婦が雨で足止めになった老女との
ばんば憑き宮部 みゆき角川書店(角川グループパブリッシング)発売日:2011-03-01ブクログでレビューを見る»
人の心に巣くう「あやかし」たち。江戸の怪奇短編集!
湯治旅を終えた若夫...
時代ホラー(怪談)集。
収録されている6編は連作ではなく、おのおの独立した作品だが、一方で『お文の影』は『日暮らし』の、『討債鬼』は『あんじゅう』のスピンオフになっている。
...
「怪」誌に掲載された作品を中心とした、宮部みゆきの時代ホラー短編集であります。
「宮部みゆき」の時代小説(奇談小説集)『お文の影(『ばんば憑き』を改題)』を読みました。
[お文の影(『ばんば憑き』を改題)]
『震える岩 霊験お初捕物控』、『天狗風 霊験お初捕物控【二】』、『あやし』、『ぼんくら』、『日暮らし』、『おまえさん』に続き、「宮部みゆき」作品です。
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宮部時代小説の人気キャラクター勢揃い! 全6編のあやしの世界。...
こちからも送らせていただきました。
宮部の時代ものはいいですよね。
先ごろ出た「桜ほうさら」も面白かったです。^ ^