物語をつくってごらん。きっと、自分の望む世界が開けるから――
理不尽な暴力を躱(かわ)すために、絵本作りを始めた中学生の男女。
妹の誕生と祖母の病で不安に陥り、絵本に救いをもとめる少女。
最愛の妻を亡くし、生き甲斐を見失った老境の元教師。
それぞれの切ない人生を「物語」が変えていく……
どうしようもない現実に舞い降りた、奇跡のようなチェーン・ストーリー。
最も美しく劇的な道尾マジック!
三つのストーリーが三つの童話とリンクして展開します。
話が飛ぶので最初は戸惑いましたが読み進んで行き先が気になり、一気に読めました。
度重なる理不尽な暴力から逃れようとして、絵本作りを始める中学生。
妹の誕生と祖母の病で人生に不安を持つ少女。妻の死によって生き甲斐を失った元教師。
苦しく孤独な状況に置かれた人々。でも各人が優しく、強さも持っています。
チェーン・ストーリーと銘打つ通り、三つの物語が紐解かれだんだんわかってくる仕掛け。
その物語の中にまた物語があって、それぞれ数多くの伏線が張り巡らされています。
人と人とがうまく繋がって互いが影響を受け合い、皆が良い方向へと変わっていくのです。
最後に想像を覆すような、奇跡の結末を迎えることになります。
道尾さんの作品は、どうしても先々ミステリアスな展開があると予想してしまいます。
それがいい意味で裏切られて、ラストは優しく美しい世界が広がっていました。
作中に散りばめられた童話が、いずれも示唆に富んでいて素晴らしかったです。
物語の中には優しさも溢れていて、読後は温かい気持ちに包まれていました。
こうしたストーリー展開にしたのは道尾さんの狙いでもあるのでしょうが見事です。
まさに、道尾マジック全開といえるような作品だったと思います。
一つの童話が生む不思議な力。関係ないようなものが実は人生に大きく影響していく。
私たちが忘れていること、気づいていないことを教えてくれ、思い出させてくれる本です。
小さなことが実は大きな力を持っている。「物語の力」というものを実感できました。
いつもいい意味での裏切りがあり、最後までどきどきわくわくさせられる道尾秀介作品。
ミステリー仕立てのもいいし、このような純文学的なのもいいな、と強く感じました。
今回は、すべての人たちの人生を肯定的にとらえた、明るく清々しい物語。
辛い境遇があっても必ずその先には希望があると感じられ、勇気ももらえる小説でした。
「ノエル」道尾秀介さんの忘れていた優しい気持ちを思い出させる作品です。
楽天からも購入できます。

「ノエル: a story of stories」道尾秀介
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3篇のチェーンストーリーが織りなす少しファンタジックな物語。
最初の「光の箱」が2008年に創られ、次の「暗がりの子供」が2011年、最後の「物語の夕暮れ」が2012年の作品であることから、当初は具体的な連作性はなかったのではないでしょうか。
少なくとも「光の箱」は独立性を持った物語であり、貧乏な子供が不遇の青春時代を送りながら理解者である女性と知り合うという道尾秀介の得意パターンの短編...
もうすぐクリスマスですね!
世の中はイルミネーションで輝いているようですが、私はコタツで読書が一番幸せです。
今までに読んだ本の中で、「クリスマスと言えば…」と思い出した大好きな本をご紹介します。
ノエル: a story of storiesposted with ヨメレバ道尾 秀介 新潮社 2012-09-21 AmazonKindle楽天ブックス ...
『ノエル a story of stories』 道尾秀介著
新潮社 2012年 ¥1500
副題にあるように、この本には登場人物たちが編んだ物語が数篇登場します
そして、物語が人に影響を与えるだけでなく、登場する人や動物も、無意識のうちに作用し合っており、全篇がつながっているという壮大な1つのお話なのです
そのため、最終章で「あれ?このインコってもしかして…」と第1章を読み...
著者:道尾秀介
ノエル: a story of stories(2012/09/21)道尾 秀介商品詳細を見る
母子家庭に育ち、そのことでイジメを受けていた圭介。そんな彼に声を掛けたのが弥生。一緒に物語をつむぐのだが……(『光の箱)。身体に障害があることで、周囲から孤立している少女・莉子。自分を理解してくれる祖母を巡り、両親はギクシャクし、しかも、まもなく生まれる妹にその祖母をと...
(この記事の商品画像はAmazonの商品リンクになっています) タイトルどおり、
「ノエル」道尾秀介
同窓会に向かう絵本作家の男は、
昔を思い出し、彼女がくるのか気になる。。
もやもやした日々を送る少女は、
ある絵本に出会う。
妻を亡くし自分の人生を振り返る老人は、
自分が何も残せなかったと思い。。。
んーよかった!
ある恋のなんともいえないその幕切れと、
えっ!とびっくりさせといての、、。
らしい雰囲気からの実は、、な展開。
絵本の登場人物と会話を始...
ノエル: a story of stories(2012/09/21)道尾 秀介商品詳細を見る
この本を読むと、物語の創作意欲が湧いてきます。
なぜか? それは本書をお読みになれば御理解いただけることと思われます。
がう、毛物語でつよくなる。それはけものがはらだ。
獸ガハラ。ビースト戦場ヶ原? 「ひたぎビースト」って物語シリーズにあったら読みたいかも。
「ひたぎコイ...
道尾秀介著 2012年新潮社刊行 ”a story of stories”と副題がついている。 以下の3短編だけど、チェインストーリーとなっている。 光の箱 暗がりの子供 物語の夕暮れ いずれも嫌な終わり方をするのかとミスリードさせられ、ちょっと落ち込むんだけど、実はそんなことはなく
「道尾秀介」の長篇作品『ノエル―a story of stories―』を読みました。
[ノエル―a story of stories―]
2月の始めに読んだ『鬼の跫音』以来、12冊連続で「道尾秀介」作品です、、、
書棚にあった「道尾秀介」作品の在庫も、本作品が最後の一冊… 寂しいですが、暫しの間はガマンですね。
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現実に立ち竦み、自分だけ...
この方、もうミステリー作家ではなくなったのでしょうか。
ひょっとしたらこれだけ売れている価値はないのかもしれませんよ。