![]() | ラジ&ピース (2008/07/31) 絲山 秋子 商品詳細を見る |
装幀は芥陽子。初出「群像」。中編の表題作と、ひとつの短編を収録しています。
表題作:相馬野枝は、仙台から群馬のラジオ局に転職したディスクジョッキーです。
容姿と妹への劣等感で、幼い頃から人との関わりが苦手で強い警戒心を持っています。
番組以外の全てが嫌いで、スタジオにしか居場所がない、生の気持ちを綴ります。
ある気づき、発信されるものでなく、リスナーと心が寄り添っていく感覚が素敵です。
職場の石田さん、女友達の沢音、恐妻センター前橋との会話が軽快で、いい感じです。
美丈夫っていう人物も印象的でした。独特な位置づけの不思議なキャラです。
「ラジ&ピース」痛々しい心が少しほぐされて、優しく温かくなりました。
「うつくしまふぐすま」回文女子、中野香奈は妹から同姓同名の人を紹介されます。
気の合う女友達になります。自転車の練習の場面は、乗り始めの頃を思い出しました。
終った男と別れて爽快な気分になります。男前でドライな感じが好きです。
「ラジ&ピース」絲山秋子さんのクールだけど熱い、潔さと男前が伝わる一冊でした。
ラジ&ピース
絲山 秋子


装画は長崎訓子。装丁は木村裕治・後藤洋介(木村デザイン事務所)。
「小説すばる」2005年10月号〜翌年10月号隔月掲載の短編集。ネタバレあり。
worried about you:ギタリストの熊井望は自分をもてあます。想い続けるのはTT。
sympathy for the devil:私・貴子は車広報職。辰也に怒り兄嫁麻子さんに好感。
moonlight mile:遠井は昔ふられ今悪性リンパ腫で入院中の神原美雪を見舞う。
before they make me run:兄が気になる俺/貴子の彼のわたし/熊井望の友人高田。
miss you:私・持田は花屋で憧れの辻森と出来ちゃった婚の姉へのブーケ作り。
back to zero:入院中知り合った辻森に写真展へ誘われた遠井。片付け途中で。
beast of burden:私・熊井望はTTと再会。新しい暮らしが始まって…。
いろんな登場人物の日常。物足りない感じも、よっつ目の話でさまざまなきざしが。人物が少しずつリンクしている群像劇・連作短編集でした。断片的にわかっていく過去。それぞれが抱える誰かへの思い。誰と誰がこんな関係なのかって驚いたり、どうなるのか気になったり―。
各話ごとに変わって飽きさせない語り口。視点が移り同じ人物でも違う印象。各人の絡み具合と微妙な繋がりが面白かったです。軽やかな読みやすさや会話の冴えも楽しみました。ラストの話で爽快感も。でも丁寧な語り口が誰に向けて書かれた文章なのか謎です。
今度は謎めいていてカッコイイ辻森さんが主役の話を読んでみたいです。鉄アレイみたいに重くなる携帯は恐いですけど(笑)。麻子さんも気になります。貴子と麻子さんの牛遊び(形容詞プラス牛p54)が面白くて自分でもひとつ…あわただしい牛。思い浮かんだらどうぞ(笑)。
そして水上バスに乗ってみたくなりました。
関連情報 絲山秋子の読了本
・・エスケイプ/アブセント 絲山秋子

装幀は池田進吾(67)。初出「新潮」2006年11月号。
エスケイプ・・・闘争と潜伏にあけくれ、20年を棒に振った「おれ」。主人公で語り手の江崎正臣四十歳の、二00六年夏。故郷、仙台にいる妹のやよいが念願の託児所を始める前に、与えられた一週間。旅先の京都で知り合った、あやしげな西洋坊主バンジャマンと長屋のベニヤミン教会での居候暮らしを描きます。
いい具合に肩の力が抜けたような、饒舌な語り口の「おれ」。遅れすぎた活動家のなごりを引きずり、時折り自問自答したり感心したりしながら過ごす日々。気になるのは消えた「あいつ」のこと。祈りたくなった「おれ」は、神さまに無茶苦茶な問いかけを…。
四歳の姪っ子、有理のことを思うおれ。うさんくさいバンジャマンの正体。向かい家の面倒見のいい歌子ばあさん。猫のペテロ。酒屋のユキ。京都を舞台に、わずかの人物が生き生きと描かれ、軽いタッチなのにざらりとした感触があって、不思議な魅力を感じた物語でした。
アブセント・・ネタバレ反転・・エスケイプを補完する作品。
エスケイプは読むと、「逃亡・脱出」以外にロバート・クインとジョディ・ハリスのレコードタイトルからとわかりますが、アブセントの意味は辞書を引くと「不在」でした。始めは違和感のあった、この両A面みたいなタイトル。読んでみて納得です。
印象に残った言葉:不在っていうのは影みたいなもんだ。エスケイプしたら不在が残る。教室に、家に、あらゆる、いるべき場所に不在は残る。(p100)
関連情報 絲山秋子の読了本
・・ダーティ・ワーク

