![]() | 平等ゲーム (2008/08) 桂 望実 商品詳細を見る |
装幀は松昭教。装画は上路ナオ子。書き下ろし。
意思決定は全て投票、職業は抽選で4年交代など、平等社会実施100年の鷹の島。
勧誘係の芦田耕太郎は出会う人々の苦しみや痛みの感情を理解できず、困惑します。
絵の才能を見出され、学びや気づきがあり評価されて、喜びや達成感を知るのです。
島への疑惑も絡め、嫉妬や悪意、落胆や失望も経験しながら成長していきます。
強引な絵の師匠千鶴子さん、十歳で絵を依頼する春口さりあがいい指導役です。
客船の甲板長の男オバサン柴田さんと、R指定のバーテン岡本さんがいい味でした。
純粋無垢から人間らしい感情を得た耕太郎は、現代のピノキオなのかもしれません。
題名「平等ゲーム」は、少し違和感。精神的な成長と前向きなラストがよかったです。
平等ゲーム
桂 望実


初出「小説トリッパー」。短編集。
年内結婚を目指し焦るOL・真樹二十九歳の戦い。
したいこと探しの専業主婦・佳乃三十四歳の戦い。
思いがけない出世のキャリアウーマン・めぐみ三十九歳の戦い。
資金繰りに苦闘するバツイチブティックオーナー・治子四十五歳の戦い。
恋愛、仕事、結婚、家族…それぞれの転機に戸惑い揺れ動く心。
若さの傲慢さや世間知らず、偶然恵まれた環境に苦さ。葛藤から明るめの結末。
面白く読めました。
各話をつなぐ足裏マッサージ店の舞子。癒す会話が上手でお店に行きたくなりました。
タイトルで篠田節子さんの『女たちの聖戦(ジハード)』を思い出しました。
周囲との摩擦をいとわず自己実現を目指していた印象です。
こちらはセルフウォーズ、内省的で気持ちを見据えていく感じ。
時代の移り変わりとか、作者さんの資質や指向の違いが現われているみたいで興味深いです。
関連情報 桂望実の読了本
・・RUN!RUN!RUN! 桂望実
・・明日この手を放しても 桂望実
明日この手を放しても

装画は菅野裕美。装幀は新潮社装幀室。書き下ろし。
19歳で途中失明して夢を失った篠田凛子。向日葵のようだった母を交通事故で亡くして半年(1995年、21歳)。持ち前の潔癖症から行動を。寡黙だけど優しい漫画家の父がいきなり行方不明に。残ったのは二つ年上の口喧しく煩わしい兄真司だけ。一番近くにいても誰より遠い兄妹の未来に待っているのは―。
凛子が抱く真司への不信感。前途多難と思っていたら真司が語り手に。冷静に客観的に分析する「可愛く」ない妹凛子像が浮き彫りに。父や手掛ける漫画について会話を重ね歩み寄りも。第三者を交えた話に思わず出てくる本音、相手への想い。凛子サイドは視覚障害者の気持ち、暮らしを簡潔に。真司サイドは仕事への悪戦苦闘、惚れて振られる繰り返し、学習の跡を軽妙に。交互に語る十二年間の出来事。
お父さんの行方がわからないままなのがミステリー&ジレンマ。
連載漫画の危機(「コスモス」ありさ&かえでの物語、読みたくなりました)。凛子の胸の痺れをやわらげる真司の怒り。気持ちの共有、心強さへの戸惑い(p182)。そして真司の短気を鎮める気づき「そうだ。凛子の言う通りだ。いつも凛子の言うことは正しい。」(p229)。理解できなくてぶつかりあい、分かり合おうとしなくても尊重しあう関係に。家族の繋がりがステキな作品でした。優しい気持ちになれました。真司がいつも身に付けている石鹸の焦げた匂い…凛子が手放せないウエットティッシュ。ホット&クールなふたりを象徴しているみたいです。私は一人っ子なのでわかりませんが、こんな関係もいいなぁって思いました。実際に兄弟姉妹がいらしゃる方は、いろんな思い出をお持ちなのでしょうね。
関連情報 桂望実の読了本
・・RUN!RUN!RUN! 桂望実
・・女たちの内戦 桂望実
姉弟のコンビネーションが羨ましい読了本
・・月光スイッチ 橋本紡

装画は菅野裕美。装幀は新潮社装幀室。書き下ろし。
19歳で途中失明して夢を失った篠田凛子。向日葵のようだった母を交通事故で亡くして半年(1995年、21歳)。持ち前の潔癖症から行動を。寡黙だけど優しい漫画家の父がいきなり行方不明に。残ったのは二つ年上の口喧しく煩わしい兄真司だけ。一番近くにいても誰より遠い兄妹の未来に待っているのは―。
凛子が抱く真司への不信感。前途多難と思っていたら真司が語り手に。冷静に客観的に分析する「可愛く」ない妹凛子像が浮き彫りに。父や手掛ける漫画について会話を重ね歩み寄りも。第三者を交えた話に思わず出てくる本音、相手への想い。凛子サイドは視覚障害者の気持ち、暮らしを簡潔に。真司サイドは仕事への悪戦苦闘、惚れて振られる繰り返し、学習の跡を軽妙に。交互に語る十二年間の出来事。
お父さんの行方がわからないままなのがミステリー&ジレンマ。
連載漫画の危機(「コスモス」ありさ&かえでの物語、読みたくなりました)。凛子の胸の痺れをやわらげる真司の怒り。気持ちの共有、心強さへの戸惑い(p182)。そして真司の短気を鎮める気づき「そうだ。凛子の言う通りだ。いつも凛子の言うことは正しい。」(p229)。理解できなくてぶつかりあい、分かり合おうとしなくても尊重しあう関係に。家族の繋がりがステキな作品でした。優しい気持ちになれました。真司がいつも身に付けている石鹸の焦げた匂い…凛子が手放せないウエットティッシュ。ホット&クールなふたりを象徴しているみたいです。私は一人っ子なのでわかりませんが、こんな関係もいいなぁって思いました。実際に兄弟姉妹がいらしゃる方は、いろんな思い出をお持ちなのでしょうね。
関連情報 桂望実の読了本
・・RUN!RUN!RUN! 桂望実
・・女たちの内戦 桂望実
姉弟のコンビネーションが羨ましい読了本
・・月光スイッチ 橋本紡

写真は井上佐由紀。装丁は番洋樹。シューズ(カバー写真)提供は亜細亜大学陸上競技部。
2003年「死日記」でエクスナレッジ社「作家への道!」優秀賞を受賞デビュー。主な作品「県庁の星」「ボーイズ・ビー」「Lady,Go」など。
別冊文藝春秋2005年11月号から2006年7月号初出。
主人公の岡崎優は、中学の頃から区間最高記録を走る度に塗り替えてきた、不敗記録を持つアスリート。目標はオリンピックの金メダル。箱根駅伝で準優勝したS大学に入学後、箱根駅伝は通過点、個人競技だから仲間なんていらないと発言、陸上部で浮いた存在に。そんな時、突然の兄の死の衝撃で、母・弘子さんが口にしたことは、真実なのか?。
初・桂さんでした。主人公の優は突出した才能の持ち主ゆえに、きっちり練習を積んでいれば恐怖は生まれないと断定。走る喜びを感じながらも、内心で周囲の人々を軽蔑し、見下し、嘲笑し、容赦なく毒舌を振るいます。この性格は、読み進めるのに抵抗がありました。ところが上記の、心を揺るがす疑惑から不安に陥り、家族や、陸上や自分の将来などについて自問自答を重ねます。抱えた悩みからメンタルコントロールも不安定に。危機を回避する計略のはずが、一転して周囲は好意的な雰囲気になり、箱根駅伝に懸ける仲間との関わりを通して優は変わっていきます。
優と周囲との間をとりなしてくれる、面倒見のいい岩本海人(かいと、通称岩ちゃん)。彼が語る家族のこと、故郷のこと、置かれた状況、優への思いは、もう一人の主人公といえるほどでした。優とは対称的な、温厚でヒューマンなキャラクターを際立たせることで、独特の面白さを増しているのかも、です。むかし観たテレビドラマ「振り返れば奴がいる」をなぜか思い出しました。箱根駅伝、そして優がどうなるのか、最後の最後まで目が離せない物語でした。
印象に残った言葉:「難しいこと考えないで、走って走って走ればいいのよ」(中略)「誰も救えないことに夢中になってるんだから、あれこれ考えず、自分のために走ればいいのよ」(女医でタロット占いをする水野あさ美の言葉、p143)
そして昼食に、コーチのボン小松の手打ち蕎麦、夕飯には、風邪を治す、岩ちゃん特製うどん雑炊が食べたくなりました(笑)。
余談:たしか「風が強く吹いている」のハイジも岩ちゃんと同じ島根県出身だった記憶が(あるいは鳥取県?)。この地区のアスリートって世話好きな方が多いのでしょうか?(笑)。
関連情報 桂望実の読了本
・・明日この手を放しても 桂望実
・・女たちの内戦 桂望実
関連情報 陸上競技の読了本
・・風が強く吹いている 三浦しをん
・・一瞬の風になれ第一部イチニツイテ 佐藤多佳子
・・一瞬の風になれ第二部ヨウイ 佐藤多佳子
・・一瞬の風になれ第三部ドン 佐藤多佳子

