
装幀は岡孝治。初出「週刊現代」。
殺された両親の仇討ちを誓った有明三兄妹。
十四年後、目撃した男を見つけた弟、復讐計画を仕掛ける兄、誤算は妹の…。
さすがの読みやすさで一気読みでした。
賢く冷静な兄・功一、擬態の天才の弟・泰輔、美貌で機転が利く妹・静奈が
それぞれの持ち味を活かして臨む様子がスリリングです。
情景が鮮明で、それぞれの登場人物の気持ちが手に取るようにわかります。
戸神行成の父・政行への葛藤や神奈川県警の加賀と草薙に思わずニヤリなど、
最後まで面白く読めました。
途中で犯人が浮かび、まさかの予想通り。でも犯人の結末は衝撃的で切なさも。
厳密なリアルさは薄くてもヒューマニズムの物語として楽しめました。
ここ何作かの落胆から少し溜飲が下がった心地です。
そして、洋食屋さんのハヤシライスを食べたくなりました。
関連情報 東野圭吾の読了本

装幀は泉沢光雄。初出「小説宝石」。
直視しがたいプロローグの後―。バーテンダーの雨村慎介は襲われ意識不明。
病院で目覚め、失った一年半前の人身事故の記憶を調べ始めると不穏な出来事が。
記憶を思い出せないもどかしさ。
会う人たちの不可解な言動。現われた謎の女の正体と目的は?。
じわじわと深みにはまるように読み進めました。
真相(記憶の中身)はほぼ予想通りでした。
登場人物が利己的な人ばかりでウンザリ感。
でもピカレスク(悪漢)小説でなくホラーテイスト。
気味の悪いマネキンをきっかけに現われる謎の女、瑠璃子がもの凄く怖かったです。
濃厚な官能描写に驚きでした。
タイトル『ダイイング・アイ』が象徴する、縛りつけ支配する目力の不気味さ。
交通事故死の被害者の怨念が伝わってくるようでちょっと寒気も感じました。
約九年前に書かれてたのに、今刊行されたのが謎です。
関連情報 東野圭吾の読了本

装画は塩谷博明。装丁は鶴丈二。初出オール讀物。連作短編集。再読。
警視庁捜査一課の草薙俊平は大学時代の友人で物理学科助教授の湯川学に、手詰まりな事件の解決協力を依頼。
燃える―もえる:突然燃え上がる頭/転写る―うつる:デスマスクは失踪者/壊死る―くさる:心臓だけ腐った死体/爆ぜる―はぜる:海で黄色い火柱/離脱る―ぬける:幽体離脱した少年。…オカルトで不可解な現象を科学的に解明します。
月9のドラマ化に驚き。でも草薙は男性だったはず(叙述トリックが仕掛けられていたのかもっ!?)&内容を忘れてる謎。再読で女性刑事はドラマ独自と判明、内容は物理系でないとわからない現象のメカニズムに文系で歯が立たなかったことを思い出して納得。『容疑者Xの献身』の予告編気分に切り替え。解明に感心しながら草薙と湯川のキャラや会話、シャープな展開などを楽しみました。
今回文庫本で読んだら、解説で東野さんの湯川のイメージが佐野史郎さんにビックリ。福山雅治さん&柴崎コウさんが先にあって考えつきませんでした。ドラマは見られず雰囲気は未確認。フジテレビなので予想通り『容疑者Xの献身』も映画化されるとか。石神のキャスティングを推理してみるのも一興かも。
関連情報 東野圭吾の読了本

装丁は高柳雅人(角川書店装丁室)。写真は(c)TOMOYOSHI OSHIYAMA。「野性時代」2004年9月号〜2007年4月号掲載を加筆修正。
主人公で語り手の僕:渡部は派遣社員の仲西秋葉と以前は軽蔑していた不倫の恋に。でも彼女は15年前、父親・達彦の愛人、本条麗子が殺された事件の容疑者。事件を巡って浜崎妙子(マダム・カラフル:秋葉の伯母)、芦原刑事、釘宮真紀子(被害者の妹)、秋葉の父と接触。近づく時効。真相は―。
さすがの読みやすさ。一気に読めました。でも誰にも感情移入できなくて…。秋葉が渡部の何を魅力に思って関係したのか謎。渡部が自信過剰?向こう見ず?でムキになるのが命取りの不自然。妻に嘘をつき続けて重ねる逢瀬の間延び感。イベントへのこだわりも謎。事件の詳細がわかるのが遅く浅い追究。真相も予想範囲内であっけない結末。
エッセイを完全撤退して小説に専念した結果がこれ?って考えると悲しく不安になりました。編集者からの持ちかけ?そそのかされた?脳内で飛び交う憶測。書かれたことがミステリー。目次にはないオマケは忠告の念押し?。
関連情報 東野圭吾の読了本
・・容疑者Xの献身 東野圭吾
・・赤い指 東野圭吾
・・使命と魂のリミット 東野圭吾
・・たぶん最後の御挨拶 東野圭吾
・・あの頃ぼくらはアホでした 東野圭吾

装丁はスタジオ・ギブ。装画はネモト円筆。
笑い飛ばしたいあの頃、若き血が躍り、心揺れたぼくらのアホ青春記。小学校から大学まで、疾風怒濤の学生時代をパワフル&赤裸々に語る爆笑エッセイ。
文庫版も出てますが読んだ(図書館にある)のはこの表紙の単行本。ほとんど再読しない私ですが、「たぶん最後の御挨拶」で思い出して、笑える本が読みたくなって手に取りました。
久しぶりに読んでもやっぱり面白かったです。「ワルもふつうもそれなりに」で中学三年で「ミュンヘンへの道」が放送―、東野さんは「ミーナの行進」の朋子より2つ年上になるんですね。東宝ゴジラシリーズ・円谷ウルトラシリーズへのこだわりの怪獣談議。「更衣室は秘密がいっぱい」の気になるその後。「僕のことではない」の二重線とスリル。
「読ませる楽しみ読まされる苦しみ」で読書嫌いが変わったのは、小峰元さんの江戸川乱歩賞受賞作品「アルキメデスは手を汚さない」だったこと。「あの頃ぼくらは巨匠だった」の映画作りの楽しさとオチ(ビギナーズラックでしょう。大学の頃、映画研究会で作品作ってたので、よ〜くわかります)。
などなど、サービス精神あふれるユーモアで、赤裸々に語られるエピソード。家族や友人との会話の関西弁が、やわらかい雰囲気を醸し出しています。忘れてたので、すごく楽しくて、いっぱい笑えました。しあわせ。
東野さんは江戸川乱歩賞受賞のデビュー作「放課後」を過小評価、「幻夜」「白夜行」で成長に驚きました。そのあとこの本で親近感が持てました。未読の方はぜひ。おすすめです。
関連情報 東野圭吾の読了本
・・容疑者Xの献身 東野圭吾
・・赤い指 東野圭吾
・・使命と魂のリミット 東野圭吾
・・たぶん最後の御挨拶 東野圭吾
・・夜明けの街で 東野圭吾
おまけ・・文庫本はこの表紙です。


カバー装画・章扉イラストは著者。装丁は石崎健太郎。
『あの頃ぼくらはアホでした』、『ちゃれんじ?』、『さいえんす?』、
『夢はトリノをかけめぐる』に次ぐ5冊目のエッセー集。
・年譜―生い立ちから、2006年直木賞受賞までの50年間。
折々に感じてきたことを丁寧に書いています。
乱歩賞受賞後、ずいぶん不遇な時期があったんですね。
めげず腐らず書き続けてきた姿勢や周囲の環境がわかったりしました。
・自作解説―デビュー作『放課後』から『使命と魂のリミット』までの全作品。
コンプリート目指してらっしゃる方々に役立ちそうです。
読んでいた作品の舞台裏や執筆意図がわかって面白かった。
一番思い入れが強いのは『天空の蜂』なのですね。
ここまで作家東野圭吾の自分史、作品史という面が強く出ています。
・映画化など―大学の頃、映画研究会だったので興味深く読みました。
『秘密』、『g@me.』、『レイクサイドマーダーケース』、『変身』、『手紙』の成り行き、
出演者とのやりとりやチョイ役出演など楽しめました。
・好きなもの―映画『スターウォーズ』、芸術性より娯楽性尊重に納得。
私は『2001年宇宙の旅』が好きです。『ガメラ3』、『オペラ座の怪人』のお話も。
・スポーツ―映画『クールランニング』、笑ったり涙したことを思い出しました。
・作家の日々―鬼怒川温泉でのエピソード。「雨の会」懐かしいです。
作家さんたちの素顔がのぞけてちょっと得した気分に。
東野さんのエッセイは、抱腹絶倒の『あの頃ぼくらはアホでした』に続いて2冊目。
ユーモアを織り交ぜる独特の筆致に東野さんの人間味がうかがえます。
楽しく読みました。知ってる映画の話題が多くてうれしかったです。
あとがきで、本業に支障が出るので撤退、これが最後のエッセイになるとのこと。
とても残念です。
毛並みのいい猫の装丁。
手にとると透かしで東野さんの章扉イラストが描かれているのがわかります。
こちらも味があっていい感じです(ネタバレ!?)。
印象に残った部分:押し続けていれば壁はいつか動く――そう信じて書き続けた。
(p268)
関連情報 東野圭吾の読了本
・・容疑者Xの献身 東野圭吾
・・赤い指 東野圭吾
・・使命と魂のリミット 東野圭吾
・・あの頃ぼくらはアホでした 東野圭吾
・・夜明けの街で 東野圭吾

装幀は新潮社装幀室。
週刊新潮2004年12月30日・2005年1月6日合併号から2005年11月24日号連載。
「人間というのは、その人にしか果たせない使命というものがある…」氷室健介の娘への言葉。
主人公の氷室夕紀は心臓外科医を目指す研修医。中学で父健介の手術失敗への疑念から医師を志します。帝都大学医学部を卒業後、いくつかの部署を経て最終目標の、父の執刀医だった大動脈瘤手術の権威、西園陽平教授のいる心臓血管外科に勤務中です。
一方、同じ帝都大学病院の看護師、真瀬望と交際している直井譲治は電子機器会社のエンジニア。病院内部や大動脈瘤の知識を学び、入院患者の島原総一郎の情報を望から聞き出し、望に頼んで病院に潜入。手術室の人工心肺装置を調べた後、犯行に着手します。
ある朝、帝都大学病院の医療ミスの公表と謝罪を求める脅迫状を発見した夕紀は、捜査に訪れた刑事の七尾から父の元後輩と知らされ、知らなかった父の過去の出来事を聞きます。夕紀の抱いている疑惑が深まる中、病院内で事件が…。
「人間は生まれながらにして使命を与えられている」(p105)。
犯人が先にわかっていて、ミステリというよりサスペンス。譲治が自分の技能を十二分に発揮した犯行で、手術中に窮地に陥った病院。狙われた人物だけでなく、巻き込まれたほかの患者の命を救うことはできるのか。そして夕紀の膨らみ続ける疑念は晴らされるのか。
危機的な状況の中で毅然と働く人たち。用意周到な計画で捕まらない譲治に問いかける、七尾刑事の推理力、判断力、強烈な説得力。予想通りの展開でしたけど最後まで目が離せない、緊迫感が伝わってくる人間ドラマでした。
印象に残った言葉:「はっきりとした確証がないかぎりは先入観を持たないこと」(p108)。
そして、私に与えられている使命は何だろう?と考えたりもしました。
関連情報 東野圭吾の読了本
・・容疑者Xの献身 東野圭吾
・・赤い指 東野圭吾
・・たぶん最後の御挨拶 東野圭吾
・・あの頃ぼくらはアホでした 東野圭吾
・・夜明けの街で 東野圭吾

装幀は緒方修一。
1985年『放課後』で第31回江戸川乱歩賞を受賞。1999年『秘密』で第52回日本推理作家協会賞を受賞。2006年『容疑者Xの献身』で第134回直木賞を受賞。主な作品『宿命』『白夜行』『幻夜』『どちらかが彼女を殺した』『毒笑小説』『時生』『手紙』『さまよう刃』など多数。
「小説現代」1999年12月号の掲載をもとに書き下ろし。
照明器具メーカー勤務で、認知症の実母・政恵と同居している前原昭夫が、妻・八重子からの電話に急かされ、帰宅して見たものは少女の死体でした。犯人の中学三年の息子・直巳を自首させようとしますが妻に説得され、息子を守るために邪悪なアイデアの実行を決意します。
一方、警視庁捜査一課の新米刑事、松宮脩平は、物心ついた頃からの恩人で、癌に冒され余命幾ばくもない状態の伯父、加賀隆正を見舞いながら、父の見舞いに来ない従兄に焦りや悔しさを感じています。そして上記の女児殺害の事件捜査で、その従兄で練馬署の刑事である加賀恭一郎と組むことになります。
『容疑者Xの献身』の後だけに期待しすぎないように気をつけて読み始めました。東野さんの作品はわずかしか読んでいませんが、『レイクサイド』『さまよう刃』に続く、家族・親子テーマの重い物語でした。平凡な家庭で突如起こった絶望的な現実から、家族と向き合わない夫・嫁と姑の対立・認知症介護・多発して歯止めが効かない少年犯罪・・・現代社会が抱える問題が浮き彫りになります。この家族に、腹を立てながら読んでしまいました。最初からわかっている犯人を守るという目的は前作同様ですが、その方法はグロテスクで戦慄するものでした。
伏線があったので、謎解きは途中まではわかりましたが、刑事、加賀恭一郎は理詰めで解決するのではなく、家族自身の手で犯行を解き明かすことに挑みます。そしてその先に隠されていた驚愕の真実。
わずか二日間の出来事をノンストップで一気に読ませます。さまざまな親と子の姿を描き、やりきれなさや切なさも含めて、最後の加賀父・息子の特別なやりとりにまで目配りが行き届いた、読み応えのある作品でした。
印象に残った言葉:「刑事というのは、真相を解明すればいいというものではない。いつ解明するか、どのようにして解明するか、ということも大切なんだ」
「この家には、隠されている真実がある。それは(中略)この家の中で、彼等自身によって明かされなければならない」
関連情報 東野圭吾の読了本
・・容疑者Xの献身 東野圭吾
・・使命と魂のリミット 東野圭吾
・・たぶん最後の御挨拶 東野圭吾
・・あの頃ぼくらはアホでした 東野圭吾
・・夜明けの街で 東野圭吾

装幀:石崎健太郎。2005年ミステリ各賞1位。第134回直木賞受賞作。
「ゲームの名は誘拐」「トキオ」「レイクサイド」など作品が立て続けにドラマ化、
映画化されている著者の人気ベストセラー。
弁当屋で働く花岡靖子と中学生の娘美里は、疫病神の横暴な前夫・富樫が
自宅に押しかけ脅されたため、富樫を殺害してしまいます。
マンションの隣室に住み密かに靖子を愛していた高校の数学教師・石神は、
茫然自失の彼女たちの窮地を救けようと決意。
花岡母娘が絶対に逮捕されないよう、ありったけの知恵と力を総動員して
災いを阻止するための周到無欠の事後隠蔽工作を実施します。
数日後、富樫の死体が発見され警察によって花岡家にも知らされます。
捜査を担当している友人の草薙刑事から話を聞いた湯川学
(既刊「探偵ガリレオ」、「予知夢」で活躍。
優秀な物理学者で天才型名探偵)はこの事件に興味を抱きます。
しかし事件に同じ大学に通っていた数学の天才で、旧友の石神哲也が
関与していることに気づいた湯川は、石神との再会後、
事件に極力関わらないようにするという、草薙の立場を尊重するスタンスから離れ、
独自に調査を開始し、苦悩します。
石神が愛する女性とその娘を守るための行動は、
常軌を逸したと思えるような内容でした(ネタバレしてませんよね、笑)。
まれに見る強烈で論理的な思考回路を持ちながら、
余りに不器用な愛情表現に泣けます。
主要キャラクターの設定の秀逸さと、周囲の人々にいたるまで張り巡らされた性格づけ、
ストーリー展開に最高傑作というのもうなずけました。
関連情報 東野圭吾の読了本
・・赤い指 東野圭吾
・・使命と魂のリミット 東野圭吾
・・たぶん最後の御挨拶 東野圭吾
・・あの頃ぼくらはアホでした 東野圭吾
・・夜明けの街で 東野圭吾
