
装画・挿絵は久世早苗。講談社ミステリーランド。
主人公で語り手の高見森(しん)には腕白で乱暴者のレッテルが。五年生進級の春、父親の転勤で東京から北九州市へ。引越し先の社宅の子どもたちとの交友。猿とは?そして鳥とは?。社宅に何か秘密が、もしくは謎があると感じた森は…。
プロローグで提示される謎。転校先で森を受け入れたのは個性豊かな子どもたち。いち早く方言を覚えた温和なココちゃん(佐久間心)、美少女なのに訛っててゲラゲラと豪快に笑う十時あや、登校班の班長の篤樹が長男の竹本五兄弟、そしてパック。方言に戸惑いながら、持ち前の行動力と率直な会話で親密に。ふたつのモノローグで深まる謎。痛快な作戦。
最近怖いのが多かったミステリーランドですが安心して読めました。日常の謎の名手、加納さんらしい目配りの行き届いた物語展開と見事な解決。危うく騙されそうに(笑)。ラスト、みんなと一緒になって自転車で坂道を駆け下りていくようで爽快でした(「ちゃちゃちゃ探偵団」に入団?笑)。
よく回る舌で土田にタンカを切るあや(p155)、聞いた話から真実を導き出すパックが魅力的。あとがきから、加納さんが少女時代の思い出を交えたのかも?こんな子が身近にいて憧れたのかも?って思ったり。
子供たちが話す北九州弁、懐かしかったです。親が共働きで、小学生の夏休みは母方の北九州の従兄の家に預けられていたので。謙遜されてますが北九州弁をきちんと再現。甦る当時のこと。高台から見た洞海湾に沈む夕日は壮観でした。
北九州出身の有名人(以下敬称略)、チャゲ&飛鳥のチャゲ、中尾ミエ、山本リンダ、萩尾みどり、松本清張、松本零士etc...。みんな、ちゃちゃちゃちゃ言っていた!?(笑)。
関連情報 加納朋子の読了本
・・モノレールねこ 加納朋子

カバー装画・章扉イラストは菊池健。装丁は大久保明子。
時をこえて届くあの頃からの贈りもの。儚いけれど、揺るぎない―「家族」という絆。短編集。
1・モノレールねこ―デブねこの首輪に挟んだ手紙がつなぐ、ぼく:サトルとタカキの友情…。
2・パズルの中の犬―夫を待つ時間に取り組んだ白いパズルの中に、犬の気配が…。
3・マイ・フーリッシュ・アンクル―家族を一度に失った中学生の私:夏澄と、ダメ叔父さん:テツハルの二人暮らし…。
4・シンデレラのお城―私:鈴子と偽装結婚したミノ(三野)さんは、死んだ婚約者:瑞樹さんがそばにいると信じていた…。
5・セイムタイム・ネクストイヤー―病で亡くした五歳の娘の誕生日祝いをしたホテルで、同じ日に泊まった私に娘が…。
6・ちょうちょう―開店したラーメン屋の店長の俺。順風満帆に見えたが思わぬ出来事にショックを受けて…。
7・ポトスの樹―ロクデナシのクソオヤジに苦しめられてきた俺。元恋人が現婚約者になって、新しい家族へ…。
8・バルタン最期の日―会社で、学校で、悩みを抱えた家族の姿を見守るザリガニの俺、口調はハードボイルド…。
不器用な主人公たちがそれぞれに抱えているものを、時間と気づきが柔らかく解き明かしていきます。過去に秘められた家族の思い、そしてこれから先への明るい兆(きざ)しが心地よかった(1と6は友達、職場―人と人のつながり)。
好きなのは8―お母さんの捨て身の言動の理由に感動。
菊池さんの1と2を合体させたようなカバー装画や章扉イラストが秀逸です。
親しみが込められた眼差し、語り口がとても優しい気持ちにさせてくれました。
ほのぼのと、心があたたかくなるような珠玉の短編集です。しあわせ。
おすすめです。
関連情報 加納朋子の読了本
・・ぐるぐる猿と歌う鳥 加納朋子
