仕立屋の淳蔵は、かつての親友高瀬に招かれ、追われるように去った信州の故郷を三十五年ぶりに訪れる。高瀬の妻の美保子は昔、淳蔵が恋焦がれた相手だが、年月が彼女を変貌させていた。佳世と出会った淳蔵は年齢差を超えて惹かれるが、過去の事実が二人の恋情をより秘密めいたものにしていくのだった。直木賞受賞作。 東京白金と信州を舞台に四人の愛憎を細かく綴った恋愛小説。登場人物の間合いの取り方や、時間の流し方などが斬...
男の愛撫に応えていた女の指がピアノの鍵盤を這っていた。弾ける水、激流を下る水、日溜まりに滴り落ちる水。全裸で奏でられるラヴェルの「水の戯れ」は破滅への旋律なのか―。心を病んだピアニストとリハビリ中のプロ野球選手の至高の愛。恋愛小説の第一人者の記念碑的作品。島清恋愛文学賞受賞作。リハビリ中のプロ野球投手達郎とピアニストで球団通訳の妻千香子。世間離れしている設定。スペシャリストとしてのプライドと反発。 ...
男と女の二十余年。秘めた想いが実を結ぶとき…。花材職人と華道家元が花木に託す熱情の過去。著者初の意欲的長編恋愛小説。華道家元の娘・向山絹子を秘かに愛する、花材職人の平賀誠吉。身分違いの恋。二十六年にわたり慕い続ける四十八歳の誠吉。現在の中で絹子との過去の関わりを回想する展開に少し混乱。でも誠吉の純粋な想いが貫かれています。植物の描写が綺麗です。職人ゆえのこだわり。律儀さが説得力を伴って語りかけてき...
1935年、千代延子爵家の次男・義正は、左翼運動に挫折し、父の宗平とともにパリへ渡った。翌年、トリポリでのグラン・プリ・レースに刺激され、家を出てカー・レーサーを目指す。だが、時は第2次世界大戦直前。帝国陸軍フランス駐在武官の父は、諜報戦のまっただ中にいた。そして義正も…。疾走する青春が興奮を呼ぶ超大作、ここに開幕。 前の記事に関連して長編冒険小説。たぶん男性向けです。第48回日本推理作家協会賞長編...