
装丁は大久保明子。装画は高島野十郎「すもも」(画像との違いは文末で補足)。
「文学界」2005年2月号から2006年5月号初出。
主人公で語り手の柳下京(やなぎもとけい)は、母と娘、百(もも)との三人暮らし。夫、礼(れい)が十二年前に失踪し、文字を書く仕事で生活しています。文字を書かせる仕事の青茲(せいじ)が恋人です。東京駅で人と会った後、どうしてか東海道線に乗り、降りた真鶴(まなづる)で一泊。その後、海へ行きたいという百と再び真鶴へ。しばらく後、礼の日記に「真鶴」という文字を見つけ、みたび真鶴へ向かいます。
川上さんの独特の宇宙を旅したような印象でした。かおやからだをぜんぶあまさず、えがくことができる夫、礼のことを時折思い出し、忘れられずにいる京。遠い、近い、あたたかい、つめたい・・・距離と温度を始め、独特の感性で描かれる平穏な日常。その中で浮かび上がる夫、恋人、母、娘のさまざまな記憶。変わらない母親と対照的に、娘との距離の変化で抱く驚きや戸惑いや不安。
・・・そこに、失踪した夫の謎にまつわる、ミステリアスな“ついてくるもの”(女)を編み込んで、境界があやふやな空間:真鶴を舞台に繰り広げられる出来事。京と一緒に迷宮に入り込み、手探りで進んで行くうちに突きつけられる問い、そして答。その後に周囲との変わっていく関係を描いていきます。
「夜の公園」に続いて、不思議な魅力に惹きこまれて、最後まで目が離せない物語でした。時とともにいろんな人との関係が変わっていくことは、悲しいこともあるけれど、きっと新しい営みにもつながっていく・・ということを、教えてくれているみたいなラストが、印象的でした。
ページ冒頭の画像は中表紙の変形(?)です。実物は深い陰影のある、散らばったすももの静物画(油絵)。このカバーはそのまま1枚の絵で、タイトルと作者名が背表紙にあるだけの、素敵な独特の装丁です。ちょっと推理してみました。長い期間の独り語りで娘の名前が百なので、日付けなしの、京の日記というコンセプトなのかもしれません。
関連情報 川上弘美の読了本・・
夜の公園 川上弘美
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「真鶴」のカバーと表紙ブックカバーは白地に深紅の明朝体で大きく「真鶴」とあり、度肝を抜かれます。中身を取り出し、本の表紙はと言うと、「すもも」の絵だけしか描いていない表紙が出てきます。ブックカバーと表紙はあまりにも対照的です。装画は高島野十郎の「すも
☆☆☆☆・ 真鶴川上 弘美 (2006/10)文藝春秋 この商品の詳細を見る失踪した夫を思いつつ、恋人の青茲と付き合う京は、夫、礼の日記に、「真鶴」という文字を見つける。“ついてくるもの”にひかれて「真鶴」へ向かう京。
昨日書いた「東京公園」は、読んでいる間中、ずっと心おだやかでいられた。しかし、この「真鶴」は、なんとも疲れた。いや、疲れた、というのとはちょっと違うのかな。消耗した。あれ?一緒か。この主人公の京には、ずっと一人の女が「ついて」くる。漢字をあてると「憑いて
川上 弘美 真鶴 失踪した夫を思いつつ、恋人の青茲と付き合う京は、夫、礼の日記に、「真鶴」という文字を見つける。“ついてくるもの”にひかれて「真鶴」へ向かう京。夫は「真鶴」にいるのか? 『文学界』連載を単行本化。 大変お恥ずかしいことに、わたしは「真鶴
ひらがなの多い文章。ちょっと読みにくい。たとえば、≪ 真鶴の夜の海の、さざなみのたつおもてに、燃えさかる船はしずんでいった。 ≫「さざ波の立つ面に」でもいいのに、と思ったが、あえて読みにくく書いて
『真鶴』川上弘美(文藝春秋)失踪した夫を思いつつ、恋人の青茲と付き合う京は、夫、礼の日記に、「真鶴」という文字を見つける。“ついてくるもの”にひかれて「真鶴」へ向かう京。夫は「真鶴」にいるのか? 『文学界』連載を単行本化。 「MARC」データベースよりなんとい
サイト名を「装丁デザイン会議」に変えようかなと思うくらい装丁が続いてしまっている...
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真鶴posted with amazlet on 07.03.06 川上 弘美
ここかしこ つかずはなれず きおくれず 以前このブログにも「グリーン車で川上弘美にナンパされて 」などという大胆不敵なるタイトルで書いたとおり、彼女の文に久しく出会っておらぬところをばったり出くわして、その後むずむずと無性に何かを読みたくなって、この
失踪した夫を思いつつ、恋人の青茲と付き合う京は、夫、礼の日記に、「真鶴」という文字を見つける。“ついてくるもの”にひかれて「真鶴」へ向かう京。夫は「真鶴」にいるのか?
真鶴すごくインパクトのある表紙です。書店で見た時はぎょっとしたんですが、図書館で借りてきたものは、すももを描いたものでした。画像のようなカバーがもう一つついているんでしょうか。青いすももに腐敗する一歩手前の一番熟したすもも。何となくこの本の内容とも合....
失踪した夫の日記から発見した“真鶴”という文字。これをキッカケに、何度となく真鶴へ足を運ぶ妻・京の揺れ動く心情を繊細に描いた長編。恋人がいながらも、失踪した夫の影をいつも追っている妻の心情が淀みなく描かれ、独自のあわあわした文体とふわふわした言葉の羅...
{/book/}「真鶴」 川上弘美装丁がとても美しい本。真っ白な外箱には赤く「真鶴」と書いてあり、本を取り出すと果物の静物画。そしてページをめくりだすと、とてもひらがなと読点が多くて驚く。ひらがなが多い事は読みやすさに繋がらない。日頃読みなれている漢字を含んだ文
真鶴川上 弘美 (2006/10)文藝春秋この商品の詳細を見る
<まなづる。ささやいてみる。まなづる。また痛みがくる>
この作品は、「かみさまの贈り物」のゆうさんのレビューをきっかけに読んでみることになりました。
内容(「MARC」データベースより)失踪した夫を思いつつ、恋人の青茲と付き合う京は、夫、礼の日記に、「真鶴」という文字を見つける。“ついてくるもの”にひかれて「真鶴」へ向かう京。夫は「真鶴」にいるのか? 『文学界』連載を単行本化。 平成18年度芸術選奨文部科...
真鶴■やぎっちょ書評なんとか今年最終に間に合いました。読みきった!今年はとても読んだ年でした。真鶴。てっきり人の名前かと思ったら冒頭から「地名」であることが判明。早速googleマップを見てみる。ぎりぎり神奈川県なんですね。地図を拡大してみると文中に....
真鶴
出版社: 文藝春秋 (2006/10)
ISBN-10: 4163248609
評価:83点
夫、礼(レイ)が失踪し、娘の百(モモ)と母親と3人で暮らす京(ケイ)。
礼が失踪して10年以上がたち、京には恋人の青磁がいる。青磁には妻子がいるけれど。
礼にひかれたのか、それとも他...
この本、まず初めにその外側に見惚れますよね。背表紙の「真鶴 川上弘美」以外は何の文字もないんですから。この画像はちょっと不満です。
娘との距離感が近くなったり遠くなったり。そういうのってわかるなって思いました。