書き下ろし。
夢を失いつつ町工場で働く四十四歳の中年男。チーフとしてスナックで働く若い女。
別々に住む、無関係のようなふたりが交互に語り手となり、
冬の数日間、それぞれの日常や仕事での出来事と気持ちを、
ありのままにつづっていきます。
中年男は工場の新入りを指導。毎日が早く終ればいいと思いながら生きるのは、
生きているのではなく日々をこなしているだけで、
死ぬまでの時間を飲み下すようにやり過ごしているだけと気がつく。
若い女は、映像作家を目指す同棲相手の彼氏(マメ)が半年前に
ニューヨークに行ってしまい、私たちは別れるのではないと念じながら、
家賃支払いと夜を埋めるために選んだスナック勤めが嫌になっている。
ある夜、通天閣を舞台に起こった大騒動で何の関係もなさそうな
ふたりの接点が明らかになり、変化をもたらします…。
西さん初読みでした。それぞれの暮らしにつきまとう不満や悩み。
本人たちは標準語で真面目に語り(会話文は大阪弁で、読みやすくメリハリあり)、
その語り口の中から自然に次第に笑える部分がかもし出されてきます。
描かれる周囲の濃いキャラクターとの人間模様の猥雑な面白さも。
それぞれの一日の始まりに挿入される、その日見た夢(太字表記)の不条理さは、
夏目漱石の「夢十夜」を思い出しました。
終盤、意外な人物の思いもよらない事件が引き起こす感動。
それまでのふたりの生き方、考え方、伏線が十分に生かされています。
冬に読むのがふさわしい、心がほんのり温かくなるような人間ドラマでした。
大阪弁風に言うと、「けったいな人たちがぎょうさん出てきて、
しんどいけどちょっとええ話」?。
ネタバレ反転:
・・・謎だったふたりの関係は、途中105ページでわかりました。
勘のいい方なら75ページで気づかれたかもしれませんね。若い女の勤め先のスナック「サーディン」のママとキワモノ揃いのホステスたち、
強烈でした。
声が聞き取りにくく「怨」を背負っているママ、下ネタ大好きの千里さん、
やることなすこと古臭い響さん、お色気満点の嘘つきのまみさん、
(一番若くスタイルがいいチイコちゃんは休み)。
このうち、私に一番近いのは、口数の少なさでママかな。
装幀は多田進。装画は西加奈子。
主な作品「あおい」「さくら」「きいろいゾウ」など。関連情報 西加奈子の読了本
・・
しずく 西加奈子
通天閣 西加奈子
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少し、甘めの評価◎。全体通しての読後感は○のような気もしたけど、読み心地的なところで◎なのである。ベタな感性小説なのだけど、評者個人としてはこの感性が悪くなく、他人には特段勧めないが、自分には良かったよという記憶のために。 同じ著者による大売れした『さ
◎◎ 『さくら』 ◎ 『きいろいゾウ』 ◎ 『通天閣』
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地味な小説なのに、ものすごく心を揺さぶられた。最初は登場人物たちが嫌いだった。まず中年の男が登場する。真面目に働いているし、人並みの常識が備わってもいるが、周囲の人々とは一切かかわろうとしない。
第24回織田作之助賞は、西加奈子さんの「通天閣」と 小玉武さんの「『洋酒天国』とその時代」に決まりました。 また、青春賞は緒野雅裕さんの「天梯」です。西加奈子さんの「通天閣」は、夢を失いつつ町工場で働く中年男と恋人に見捨てられそうにな....
通天閣 西加奈子
どうしようもない人々が醸し出す、得体の知れないエネルギーが溢れている大阪ミナミ。社会の底辺でうごめく人々の愚かなる振る舞いや、おかしな言動が町を彩っている。主人公は、夢を失いつつ町工場で働く中年男と恋人に見捨てられそうになりながら...
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通天閣に行きたいと思っているのに、なぜか未だに一度も行けてない私です。
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通天閣
西 加奈子
●通天閣/西加奈子
●筑摩書房
●1365円
●評価 ☆☆☆
夢を失いつつ町工場で働く中年男と、
恋人に見捨てられそうになりながらスナックで働く若い女。
ふたりは周りの喧騒をよそに、少しづつ追い込まれていく。
しかし、通天閣を舞台に起こ
NHKで太宰治のことを取り上げた時、この本の著者の西加奈子さんがしゃべりっぷりがおもしろくておもしろくて・・著書を読んでみた。この人の文も太宰のようになにかこう読む人の心をわしづかみにするものがある。ええ話の周辺でダダ滑りにならずちゃんとふんばる含羞っぷり
藍色さんの初・西作品はどうでしたか。
私は「きいろいゾウ」が初作品だった
のですが、その愛情の深さや重さに
すっかりやられてしまいました。
今回の作品は「きいろいゾウ」に
比べるとシンプルな感じがしますが、
最後の最後でピタっとはまる
感覚が気持ちよかったー!
地味だけど、BSでドラマ化もアリ
な作品でしたよね。