作家Mは次の作品の構想を考えあぐねていたが、なんとなくただの
飲み会になりつつあるのび太顔の編集者との打ち合わせでの苦し紛れの言葉から、
デビュー作の登場人物の成長した姿を描く成り行きとなった。
別れたばかりの恋人が慶応出身だったことから、主人公を慶応の学生に設定。
別れたばかりの恋人に、取材させてくれる学生を捜してもらい、
自分より10歳以上年下の青年たちに会いはじめる。
虚構と現実がない交ぜになっていくなかで、浮かび上がるものとは。
書かずにはいられなかった、恋多き著者が描くひりひりする生き方。
「どうしているのか連絡くらいしてください。あなたは何様ですか」
―出会い系サイトで知り合った八つ年下の恋人との交際は、あっけなく終わった。
担当編集者の野末君と通い始めたK大辻堂キャンパスに、
「私」の探し求める男はいるのだろうか。
恋多き作家「前川麻子」が、うそと真実の隔てを超えた世界で、
そのひりひりするような生き方を描いた最強の恋愛小説。
創作のための覚え書き風に並べられていく、考えたこと、迷い、見たこと感じたこと。
ルポルタージュ風な作劇術で語るトリッキーな物語の試みです。
読み手を挑発するような言葉があちこちに出現します。
恋愛としての側面からは主人公を含めた登場人物全員が痛々しい物語。
成長としての側面からは十歳も年下の大学生たちへの温かい視線が優しい物語。
私小説としての側面からは作家として勝負をかけている姿勢が勇ましく潔い。
虚実あいまいで複雑な構成なので、幻想的なファンタジック要素もあります。
恋と創作活動が同時進行する中に、苦悩や自意識、隠微な妄想までさらけ出します。
作品にあることが事実なら、作家M=著者は青春小説を書くことに成功した印象。
すべてが作られた物語なら、作家M=著者は稀有な私小説を書き上げた感じ。
もし「これを読んだら連絡をください」前川麻子さんの多面的作品。読み応えありです。
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「これを読んだら連絡をください」前川麻子
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