ひとりが気持ちよかった。やっと、ひとりになれた。親や友だちから解き放たれた地。
風はぶっきらぼうだけど、いじわるじゃない。出生の秘密が、私を香港へと運んだ。
孤独を初めて抱きしめた十七歳のたおやかで、ガッツな青春の物語。
物語の主人公は彩美・17歳。その夏のことを年を経て自分で語る趣向です。
高校1年末頃から不登校気味でうまくいかない原因は父親の不在と感じている彩美。
突然、母親に連れられてずっといなかった父親が暮らしているという香港に行きます。
見知らぬ喧しい街。負けるものかという気持ちで乗り込んだ彩美の意地。
毎日が冒険とでもいった風に香港で生活し、徐々に前向きになっていく彩美。
広東語を少しずつ覚えて街を歩き香港流のやり方を肌で感じて馴染んでいきます。
言葉が通じないゆえ、コミニュケーションは自ずと必死にならざるを得ないのです。
最初はさっぱり分からなかった広東語を覚えるのが楽しくなってくる彩美。
素のままの自分になって自分が自分であることの心地よさを、しっかり実感。
閉じていた彩美の気持ちが外に向かって広がっていく様子に元気をもらったようです。
彩美の祖母のちゃきちゃきっとした物言いとせっかちな性格が面白いアクセント。
香港の風景が喧噪と雑踏から立ちのぼってきて生きるエネルギーそのもののようです。
「好開心」うれしい、「果汁舗」ジュースを売る屋台、「好食」おいしい等々。
けたたましい広東語ですが字面から感心した言葉がいくつもありました。
思うように生きられなくても、ここに居ることをかみしめようとする彩美に安堵。
タウフファ「香港の甘い豆腐」大島真寿美さんの清々しく温かな気持ちになる本です。
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「香港の甘い豆腐」大島真寿美
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香港の甘い豆腐
大島真寿美
2004-10 理論社
装丁買いした本・その11は、大島真寿美さんの「香港の甘い豆腐」。
出生の秘密が私を香港へと運んだ。顔も知らない父親の故郷・香港に一人残さ...
トラックバックしてもらって、また読みたくなりました。
読書量がすごいですね。尊敬してしまいます。
読んだことのある本もいくつかあったし、
好きな作家さんの名前もたくさん並んでいてうれしかったです。
本探しの参考に、またお邪魔させていただきます。