惨殺されて廃工場に捨てられた主婦。男の肉体を持つ美女。消えた乳児。
覚醒剤漬けの売春婦。元刑事の私立探偵と、悪徳弁護士と、
悪魔のように頭のよいヤクザ…二歳たらずの男児を育てながら、
複雑な事件に取り組む女刑事・緑子が、
生命の危機にさらされながら迫った驚くべき真相とは。
そして緑子は、母性や愛に対する人々の幻想の向こう側に
ぽっかりと開いた暗黒の淵を覗き込むこととなった―。
新鋭女流作家による、まったく新しいタイプの本格的ハードボイルド警察小説。
再読。母になった緑子が前作より更に人の業の深さを軸とした事件を解決する作品。
緻密な設計図から精密な機械を作るように、組み立てられています。
別々の事件と思えた乳児誘拐事件や主婦惨殺事件や狙撃事件が絡まる様が面白いです。
一つ一つの出来事が、読む進めていくうちに、収まるところに収まっていく感じ。
どんどん作品の中に引きずり込まれていくみたいです。
ヤクザの若頭である山内と、元刑事の探偵麻生が登場します。
脇役である彼らの泥沼の愛憎関係が、この作品に独特の厚みを持たせています。
特に印象に残ったのは「失う物が無い者の強さと、守る者がいる者の強さ」の違い。
警察官、母、女、さまざまな顔を見せながら奔走する緑子。
緑子も母になったことで、前作とはまた違った強さと魅力が出てきたように思います。
しかしやっぱり弱さもあって、そこがこの主人公の最大の魅力なのかもしれません。
自分の弱さを知っているからこそ逆に強くもなれるのですね。
愛する者を守るために人はどんなことも厭わない覚悟。だがそれは時には悲劇を生む。
事件が解決しても、それが決して人を救うことにはならないのが哀しいです。
マドンナ「聖母の深き淵」柴田よしきさんが描くラストの切なさが胸に残ります。
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聖母(マドンナ)の深き淵 柴田 よしき (著) 女刑事緑子シリーズ2弾。 1弾をブツブツと文句を言いながら読んだくせに懲りずに2弾目(笑) 前作で妊娠して、出産し下町の所轄配属とな
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