昭和初期の林芙美子、吉屋信子、永井荷風による小説があの気鋭作家によって現代に甦る。
失業男とカフェメイドの悪だくみ、麹町の洋館で独逸帰りのお嬢様につかえる女中、
麻布の変人文士先生をお世話しながら舞踏練習所に通った踊り子……。
レトロでリアルな時代風俗を背景に、うらぶれた老婆が
女中奉公のウラオモテを懐かしく物語る連作小説集。
昭和初期を舞台にした、仰天“女中小説”連作。本歌取り小説でもあります。
こずるくて抜け目なく、でも根本は愚かな「すみ」。最初は好きになれませんでした。
でも舞踏教室に通ったり上流家庭に奉公してプロのノウハウを学んだり、いつも前向き。
女中あるときは女給として生き抜いたすみは、無学なのに(無学だから)たくましい。
終章の文士の言葉「君は強者だね」が全てを語っています。生きる力がすごいです。
平成の東京も昭和の東京も、そこにうごめく人の営みは同じなのでしょう。
自分の若さを承知で利用する若い女の子たち。群がる男たちも全く変わらない有様。
非合法活動、226事件、カフェーの女給、浅草レヴュー、満州、ナチスドイツの台頭。
昭和初期の世相をうまく取り入れながら、最後は平成の東京に持ってきます。
オマージュとトリビュートの元話。「ヒモの手紙」は林芙美子「女中の手紙」。
「すみの話」は吉屋信子「たまの話」。「文士のはなし」は永井荷風「女中のはなし」。
昭和の荒波を生き抜いてきた「女中譚」中島京子さんの手腕。巧いです。
「女中譚」中島京子 楽天からも購入できます。「女中譚」中島京子
- http://1iki.blog19.fc2.com/tb.php/1860-1d3b86af
トラックバック
中島氏初読みです。 記事を書く前に本書を返却してしまったので、なけなしの記憶をたぐりよせながらこの記事を書いています(汗)。 本書は三篇の短編からなっています。読み始めたときはバラバラのお話かと思っていたのですが、違うことがわかり点と点がつながって線となり
中島京子の『女中譚』(2009年8月 朝日新聞出版刊)は、ぞわぞわしちゃう本である。
作者の中島京子さんは、デビュー作の『FUTON』といい(なんたって、田山花袋の蒲団をローマ字にするんだよ)、『日本奥地紀行』のイザベラ・バードが東北と北海道を旅したとき
イトウの恋 (講談社文庫)クチコミを見る『イトウの恋』は、横浜が主な舞台であったので、読んでいて親近感が沸き、なんとなくイメージも掴みやすかったです。漫画作家女史が「母」 ...
今日は忙しくなってしまう予定です。
昨日まで2.3日、比較的暇だったので、読書三昧でした。
さて。
今日は、中島京子著「女中譚」
女中譚(2009/08/07)中島 京子商品詳細を見る
月ママさんのブログに...
女中譚 作者: 中島京子 出版社/メーカー: 朝日新聞出版 発売日: 2009/08/07 メディア: 単行本 購入: 2人 クリック: 5回 この商品を含むブログ (16件) を見る 林芙美子、吉屋信子、永井荷風の女中の話をトリビュートした作品集。これは良作でした。中島京子さんは初読みでし
[C18320] 承認待ちコメント