真面目で気のいい人ばかりと噂の千七長屋。しかし陰に回れば、差配も店子も裏稼業の凄腕揃い。
そんな悪党の巣に、加助が迷い込んだ。人助けが生き甲斐で、他人の面倒を買って出る底なしのお人好し…。
加助が持ち込む厄介ごとで長屋はいつも大騒動、しぶしぶ店子たちは闇の稼業で鳴らした腕を揮う。
世間からいい人たちばかりとの評判。実は裏では悪党たちという設定が面白いです。
悪党とは言えそれぞれ仕事の美しさやこだわりを持った凄腕の者たちの集まり。
裏の顔を持つ者たちだからこそ、表で良いことをしている内についてしまった通り名。
そこに手違いで錠前職人である加助が住み込むことになります。
裏では錠前破りの同業者と思っていたら実は真っ当な堅気で根っからのお人好し。
長屋連中の妙に会話が噛み合うようで噛み合わないことに戸惑う様子が可笑しいです。
面倒ごとを引き起こさず大人しくしていたい悪党たち。
なのに次々と他人のトラブルや面倒ごとを背負い込んでくる加助。
正体を教えるわけにもいかず、住人たちは渋々相談を始めます。
自分たちが裏稼業をもつことを加助に知られずに解決する算段です。
そうして裏稼業の腕を振るい、難問を鮮やかに解決していきます。
中心にいる質屋の十七歳の娘「お縫」がいいキャスティング。
いろんな人助けの「手口」。適度なスリルと謎と恋でテンポよく軽快に読めます。
人々の日常をもっと読みたいと思えるほどキャラクターが活きていて楽しいです。
大悪党を懲らしめる展開は仕事人風で痛快。読後感もよく、とても面白かったです。
何か面白い本を探しているのであれば、お薦めしたい一冊。
悪党たちの「善人長屋」西條奈加さんの風刺と人情の痛快時代劇です。
目次・善人長屋/泥棒簪/抜けずの刀/嘘つき紅/源平蛍/
犀の子守歌/冬の蝉/夜叉坊主の代之吉/野州屋の蔵
「善人長屋」西條奈加 楽天からも購入できます。
「善人長屋」西條奈加
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西條奈加でタイトルが「善人長屋」、これは読むしかないでしょう。善人長屋と噂される千七長屋に越してきた加助が引き起こす人助けに、差配の娘お縫が両親と長屋の連中を巻き込む義理人情。そこは西條奈加、只の善人ではござんせん。長屋に住む人々の思いが響きます。
善人長屋 作者: 西條奈加 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2010/06/19 メディア: 単行本 クリック: 9回 この商品を含むブログ (7件) を見る 世間から「善人長屋」と呼ばれてるけど、実は大家も店子もみんな小悪党。拠所ない事情で裏稼業に手を染めてしまった人々。そんな長
JUGEMテーマ:読書★★★★(4/5)あらすじ
困った人は見過ごせない、人助けが生き甲斐のお人好し・加助がたどり着いた「善人長屋」。温厚篤実で気持ちのいい善人ばかりが住むという評判とは裏腹に、実は差配も店子も裏稼業の凄腕、その世界では一目置かれた悪党揃い
西條奈加「善人長屋」を読みました。
ちょっと懐かしい味わいがある市井物の時代小説。
質屋の儀右衛門が差配する長屋は、住んでいるのが善人ばかりだと評判の通称「善人長屋」。
しかし実際にはこの長屋に住んでいるのは、裏稼業を持つ悪人ばっかり。脛に傷を持...
今日の一冊は、『善人長屋』(2010年6月)。
今春屋ゴメスの作者で、最近では、まぁ、安心して読める作者です。江戸情緒の人情話で、ミステリー仕立てでもあり、読みやすい短編連作ものです。
店子がみんな裏稼業を持っていて、何かの間違いで入居してきた根っからの善人...
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