人口12万人の寂れた地方都市・ゆめの。
この地で鬱屈を抱えながら生きる5人の人間が陥った思いがけない事態を描く渾身の群像劇。
合併でできた地方都市、ゆめので暮らす5人。
相原友則―弱者を主張する身勝手な市民に嫌気がさしているケースワーカー。
久保史恵―東京の大学に進学し、この町を出ようと心に決めている高校2年生。
加藤裕也―暴走族上がりで詐欺まがいの商品を売りつけるセールスマン。
堀部妙子―スーパーの保安員をしながら新興宗教にすがる、孤独な48歳。
山本順一―もっと大きな仕事がしたいと、県議会に打って出る腹づもりの市議会議員。
出口のないこの社会で、彼らに未来は開けるのか。
状況は様々ながら、仕事面も家庭面も破綻に瀕した状況にある5人の男女。
現代社会の歪みから抜け出せずに、止め処なく暗転していく物語です。
与えられた持ち場で努力して状況の好転を試みますが、更に悲劇を呼ぶことになります。
地方都市の救いのない経済状況と精神荒廃の様相を実によく描いています。
見えない解決の糸口。正義も良心も見えません。正義の味方も不在。
生活保護の不正受給、悪徳商法、新興宗教、古い利権がらみの地方政治などなど。
格差社会の元で生まれた様々な事件が、一度にこの地方都市で起きてしまいます。
フィクションなのですが、一種の現代社会ドキュメンタリーです。
冒頭の様々な社会問題には発生する原因があるのに、現代社会にはその解決策がない。
そこから、この物語の登場人物たちのように人生が、さらに暗転していくのでしょう。
結末はあるものの、何も解決されない諸問題がそのまま投げ出されたような感じです。
解決なんて「無理」奥田英朗さんのフィクションぽい結末は少し残念です。
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「無理」奥田英朗
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「無理」奥田英朗
最近合併して”ゆめの市”になった地方都市。
そこで暮らす、
社会福祉事務所に勤める男。女子高生。
インチキセールスマン。スーパーの保安員。
2世市議会議員。
の5人は。。。
HPアリ
ずっと気になってたけど、その厚さゆえに手にとらずにい...
無理 作者: 奥田英朗 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2009/09/29 メディア: 単行本 購入: 4人 クリック: 41回 この商品を含むブログ (68件) を見る 夢も希望もない町「ゆめの市」を舞台に、5人の主人公たちが「奮闘しているにもかかわらず悪いほうへいってしまう」スパ
49章から構成されていて、1章当たりの原稿用紙枚数は20枚から30枚となっている。
1章から5章までは各章ごとに今の社会でよく現れる人物を登場させている。
相原友則―ゆ...
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