目次
第1章 日本ボクシングの夜明け/第2章 ホープたちの季節/第3章 切り札の決断/
第4章 スーパースター/第5章 フライ級三羽烏/第6章 黄金のバンタム/
第7章 マルスが去った/第8章 チャンピオンの苦しみ/第9章 「十年」という覚悟
1960年代、リングという四角い小さな戦場で、
2つの拳だけで世界をつかもうとした若者たちに多くの日本人が熱狂した。
その中心にいた一人のボクサー。19歳でフライ級王者となり、
22歳で「黄金のバンタム」エデル・ジョフレを破って二階級制覇、
26歳でフェザー級王座に挑戦し「幻の三階級制覇」で生ける伝説となったファイティング原田―。
時代の高揚感の中で躍動し、命を削ってぶつかり合った原田とライバルたちの激闘を、
スピード感と臨場感あふれる筆致で描いた傑作ノンフィクション。
昭和のボクシング界をドキュメンタリータッチで描いています。
当時の名ボクサーたちは躍動的でとっても魅力的。
バランス良く、リズム感あふれる構成によってどんどんひきこまれていきました。
選手達は戦後の復興を遂げ経済大国に近づく日本と重なって見えたはず。
だからこそ選手によせる熱狂ぶりは現在の比ではなかったのでしょう。
それに応えるように命を削るような努力をしたのがこの時代の選手たち。
猛練習で得た15ラウンドをフルに激しく打ちまくる無尽蔵のスタミナを武器として
フライ級とバンタム級の2階級を制覇したファイティング原田を中心に、
日本のボクシング界が最も隆盛を極めた時代のボクシング選手たちを描いています。
敗戦後の日本人の心を鼓舞するボクサーの熱闘、実際の現場の過酷なその実態、
トレーナーやプロモーターとの人間関係、世界で日本がどんなランクにいたか、
海外の対戦相手のことまで丹念な取材を得て、力みのない文章でつづっています。
現在なら世界チャンピオンになれるような優れた素質を持った選手が何人もいたこと。
挫折と弟子の雪辱。戦い続けるその姿を描いている本書を読んで胸が熱くなりました。
ボクシングを題材に、昭和にあり平成の時代に失ってしまったものが浮き彫りに。
郷愁と喪失感が交錯する中にも読み進めるにしたがってさまざまな感銘を覚えました。
闘う「リング」百田尚樹さんのボクシングノンフィクション。熱い記録の一冊です。

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「リング」百田尚樹
「リング」百田尚樹
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