「コロヨシ！！」三崎亜記

２０ＸＸ年、掃除は日本固有のスポーツとして連綿と続きつつも、
何らかの理由により統制下に置かれていた。
高校で掃除部に所属する樹は、誰もが認める才能を持ちながらも、
どこか冷めた態度で淡々と掃除を続けている。
しかし謎の美少女・偲の登場により、そんな彼に大きな転機が訪れ―
一級世界構築士三崎亜記がおくる奇想青春小説。

青春スポーツ小説でもありファンタジーでもある異世界の物語。
現実の世界に似ているようで、どこかかけ離れた架空の世界が舞台です。
スポーツとしての「掃除」が、高校３年間のみ許される競技となった世界。
その歴史は謎に包まれ、ある時を境に禁止された国のマイナーなスポーツ。
主人公は密かに子どもの頃から「掃除」を続けている高校生の少年・樹。
国家が統制せざる得ない「掃除」の過去、ある日突然に姿を消した祖父。
そして抗えない自分と「掃除」の関係、謎を抱えながらも成長していく物語です。
今回もそうなのですが、この独特の世界観の描写がとても絶妙。
例えば「掃除」のルールについての説明や、競技や、舞のシーンの描写など、
学生なら毎日当たり前の掃除がまるでフィギュアスケートのようなスポーツに。
武道のような、舞踊のような、競技のような芸術点と技術点を競う「掃除」。
立体的に描くのが秀逸で見たこともないのになんとなくイメージできる気がします。
高校生活を「掃除」に懸け全国大会を目指す一方で謎にも少しずつ触れながら展開。
部活を主軸とした高校生の青春物語と言いきれない世界観の大きさがあります。
カードキーの謎、恋愛の行方、掃除競技の結果、多すぎる謎。
ラストがかなり駆け足な感じもありますが、読後感もさわやかでした。
頃良し「コロヨシ！！」三崎亜記さんの楽しめる作品。続編が楽しみです。

コロヨシ!!三崎亜記

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