寂しさを、ずっと誤魔化して生きてきたんだと思う…
いろんな女性を愛したけれど、家族を持とうとはしなかった父。
孤独を奥深くに抱き、家族を持つのが怖かった娘。
白い木綿のような不思議な魅力に溢れる、衝撃のデビュー作!
第6回小説新潮長篇新人賞受賞作。
再読。一つの家庭に安住できない鞄職人の愛人の娘として育った主人公麻子。
そのトラウマで家族を信じきれず普通の家庭を持つことに拒否反応を示します。
剥き出しの心で不器用に生きる麻子は妻帯者高木、同居人濱田のどちらかの子を出産。
子育てを通じ、「家族として」自分を選んでくれた濱田と家庭を築きながら、
自分の孤独やの寂しさに気付き、当たり前にある普通の日常を幸せに感じます。
心を病みそうになり、本当に心を病んでしまったかつての先輩ユキコを目の当たりに。
自分を取り戻していく姿は切なく、ほろ苦いです。
嫌悪し愛しながら、職人の父の血を感じつつ、自分の人生のように実感する物語。
あんまり考えたことなかったけど家族という繋がりについて考えさせられました。
この手の小説は大概不幸な結末が多いのですけれど、本書は静かに落ち着いたラスト。
切ない「鞄屋の娘」前川麻子さんの染み入るような「家族」の物語です。

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「鞄屋の娘」前川麻子
「鞄屋の娘」前川麻子
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