自らが犯した不祥事で職を追われた元警官の佐伯修一は、
今は埼玉の探偵事務所に籍を置いている。
決して繁盛しているとはいえない事務所に、ある老夫婦から人捜しの依頼が舞い込んだ。
自分たちの息子を殺し、少年院を出て社会復帰しているはずの男を捜し出し、
さらに、その男を赦すべきか、赦すべきでないのか、その判断材料を見つけて欲しいというのだ。
この仕事に後ろ向きだった佐伯は、所長の命令で渋々調査を開始する。
実は、佐伯自身も、かつて身内を殺された犯罪被害者遺族なのだった…。
江戸川乱歩賞を受賞した著者が、
犯罪者と犯罪被害者遺族の心の葛藤を正面から切り込んで描いた、衝撃と感動の傑作社会派ミステリ。
重いテーマなのに読みやすく読み応えがある良質な薬丸作品。今回は連作短編形式。
犯罪被害者家族からの依頼で加害者の追跡調査をいくつか実施していく主人公佐伯。
自らも犯罪被害者遺族で姉を殺した加害者達を追跡調査していく形で話が進みます。
遺族の精神面を描いた作品は他にも沢山ありますが、独自のスタンスです。
加害者たちを追跡調査していく中で発覚する数々の事実。
様々な人と関わっていくうちに最初は復讐心の塊だったのが変化していく佐伯。
この作品が他と一線を画す点は主人公の成長だと思います。
加害者は反省しているのか、どのような生き方をしていたら赦せるのか、判断は困難。
苦悩し葛藤しながら受け止めていく姿に心が痛くなり目が離せませんでした。
加害者側の親子関係なども丁寧に描かれていて、とても興味深い内容。
ラストに意外性があって、思わず拍手したくなるほど微笑ましくて良かったです。
赦しがテーマの「悪党」薬丸岳さんのお勧めしたい1冊です。

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「悪党」薬丸岳
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