「ヤドカミ様に、お願いしてみようか」「叶えてくれると思うで。何でも」
やり場のない心を抱えた子供たちが始めた、ヤドカリを神様に見立てるささやかな儀式。
やがてねじれた祈りは大人たちに、そして少年たち自身に、不穏なハサミを振り上げるー
やさしくも哀しい祈りが胸を衝く、俊英の最新長篇小説。
第144回(平成22年度下半期)直木賞受賞作品。
鎌倉のある町へ転校して二年経った小学五年生の慎一。
春也と、転校してきた者同士での寄り添いは濃密です。そして因縁のある少女鳴海。
二人の少年と一人の少女の心理が、丁寧に描写されていきます。
打ち解けられないクラスで流れる子供たちの時間。彼らの関係、距離感が絶妙です。
三人の交流を、小さなしぐさや台詞とともに背後に動めく心情を伴って描きます。
その中での嫉妬、嘘、駆引き、友情。慎一に嫌がらせの手紙を書くのは誰。
鳴海をめぐって仲良しの少年二人の心が騒ぎます。
ヤドカリをあぶる残酷な遊びは、次第に神話性を帯び彼らの行動を縛ってゆくことに。
様々な心の葛藤を緻密に描きながら興奮のエンディングに進んでいきます。
三名の描写がとても繊細で、この年齢にタイムスリップしたような感覚を覚えました。
子供時代の閉塞感や残酷さも共感。少年の澄んだ心が濁っていく描写が胸を打ちます。
近づく心の闇で道を外しそうな危うさに最後までどきどきしながら一気に読みました。
私たち自身、もう思い出そうともしない残酷な失敗をいくつもしてきたはずなのです。
忘れていても、いくつもの失敗を越え、こうして私たちは成長してきたのですね。
殺人やトリックがなくても、子供時代の心を表現して迫真性が読者を離さない物語。
夜の「月と蟹」道尾秀介さんの懐かしく苦く悲しい物語。複雑な感情表現が見事です。

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「月と蟹」道尾秀介
「月と蟹」道尾秀介
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直木賞受賞作品のひとつです。道尾さんの作品は初読みでした。読みながらずっと感じていたのは、ひんやりとした手触りの、心地いい文章だなあということ。独特な描写で、子どものじ...
月と蟹 作者: 道尾秀介 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2010/09/14 メディア: 単行本 購入: 1人 クリック: 110回 この商品を含むブログ (73件) を見る 直木賞受賞作。 なんだけど、どうでもい...
月と蟹(2010/09/14)道尾 秀介商品詳細を見る
テレビやゲームソフトに入りびたるのではない、たとえばソフトボールのように自発的に野外に集まってするスポーツの類いでもない。日用...
鎌倉市に近い海辺の町。 小学校高学年の慎一は父親が癌で亡くなり、 船の事故で片足を失った祖父の家に母親と住んでいる。 同級生の春也は関西から引っ越してきたが、家では虐待に
今日は雨降りの北海道
昨日までは気温も15度前後と暖かくなっていたのですが
今日は少し低めの予報
最近は天気も不安定で、雨が降ったり晴れたりと落ち着かない天気ばかり
そ ...
月と蟹道尾 秀介(文藝春秋)売上ランキング:10,862おどろおどろしさ不思議な読後感が残る恐怖を操る技術が秀逸Amazonで詳細を見る楽天市場で探す最安値ショップを探す中古最安値を探すmad...
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月と蟹(2010/09)道尾 秀介商品詳細を見る芥川賞・直木賞が決定しました。
ちょうど図書館の予約の本が確保できたと連絡があったのでした。
ラッキーなことに、それは 道尾秀介さん
「月と蟹」 道尾秀介さん著。 直木賞受賞作。 道尾さんの本を読むのは2冊目。 前回読んだ本では、ちょっと苦手かなーと思った作家さんなんですが、直木賞受賞ということと、新聞イ
道尾秀介著 2010年文藝春秋刊行 初出 2009年〜2010年「別冊文藝春秋」 直木賞受賞作品とのことだけど、ちょっと難しかった。小学生の子供たち3人の物語で、自分の世界が全世界と思って
祝直木賞受賞。相変わらずテーマが重いなぁ。そして表現がリアルで気持ち悪い。それぞれ事情を抱える子供達のお話です。ヤドカリを神様になぞらえて、ヤドカミ様と呼んで、どうにも...
月と蟹 作者: 道尾秀介 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2010/09/14 メディア: 単行本 購入: 1人 クリック: 122回 この商品を含むブログ (73件) を見る 面白かった!★★★★★。 舞台は鎌倉。...
月と蟹(2010/09/14)道尾 秀介商品詳細を見る
昨年の直木賞受賞作品。父親を亡くし、母と父方の祖父と共に暮らす孤独な少年の物語。
これまで道尾さんの作品はちょこちょこ読んできた
「道尾秀介」の長篇作品『月と蟹』を読みました。
[月と蟹]
『鬼の跫音』、『龍神の雨』、『球体の蛇』、『光媒の花』、『月の恋人―Moon Lovers』に続き「道尾秀介」作品です。
-----story-------------
あの夏、海辺の町で少年は大人になる涙を知った
孤独な子ども達が始めた願い事遊びはやがて切実な思いを帯びた儀式めいたものに――深い余韻が残る少年小説の傑作。
海...
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