「やなりいなり」畠中恵

身体は弱いが知恵に溢れる若だんなが大忙し。
頼れるようでどこかズレてる妖たちも仰天するほど千客万来。
いつも大賑わいの長崎屋に、史上最高の千客万来！？
大人気「しゃばけ」シリーズ第十弾は、新キャラクターがてんこもり！
全話に「レシピ」も付いてます！

若だんなの咳がなかなか治まらない。守狐が特製「やなり稲荷」持参でお見舞いに。
そこへどこからともなく見知らぬ幽霊が現れて稲荷寿司を掴もうとします。
若だんなが護符を貼り実体化して捕まった幽霊の正体は？表題作を含む５編収録。
ユニークで面白いシリーズ。毎回新作が出るたびにせっせと読んできました。
今回は各話の冒頭に食べ物のレシピがあってこれまでにない趣向が凝らされています。
もちろん単なるレシピではなく江戸テイストと著者独自の味付けがなされています。
レシピの描き方がしゃばけ風で愉快。これらのくだりは、なかなか楽しめます。
また生き霊に関わる作品が二つあることも従来と異なる「味付け」と言えるでしょう。
ネタバレしないように書くのは難しいけど､前回のとしっかりリンクしています｡
屏風のぞきの侠気とか、友人の縁談とかの部分に繋がりを読み取れました｡
５編の話はそれぞれなかなかいい味を出しています。表題作のほかに、
恋しい愛しいという気持ちが蔓延し、ある界隈が混乱をきたす「こいしくて」、
一太郎の父藤兵衛が行方不明になる話「からかみなり」、
変わった卵が騒動を起こす話「長崎屋のたまご」、
栄吉が働く安野屋の菓子を買い占める新六と、その友五一の哀しい友情「あましょう」
ほのぼのとした温かみのある話からきゅんと切ない話までさまざまです。
ただ今回は、いつものメンバーだけではなく変わった妖しも数多く出てくるのですが、
いつもは元気な妖たちが生き生きと活躍する場面が少なくなっている気がします。
妖たちの存在感が薄れてきているような。特性を生かした活躍が少ない印象です。
また、強引な設定というかストーリー展開に無理があって納得しにくくて残念です。
ちょっとさみしさの残る感じでしたが、それでもきっと次作も読むだろうと思います。
シリーズ１０周年おめでとうございます。これからもこのシリーズが続きますように。
で､初回限定｢鳴家携帯ストラップ｣は、かわいいので使わず保存します｡
オマケだし雑なのかとか思っていたら、とても丁寧な作りで使うのが勿体ないので。
鳴家稲荷「やなりいなり」畠中恵さんの大人気シリーズ。次回も期待しています。

やなりいなり〔限定版〕

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