みんな、それぞれで生きている。それでいい。
圧倒的な肯定を綴る、西加奈子の柔らかで強靱な最新長編。
女優宮崎あおいさんが以前NHK「あさイチ」で紹介してた本、お気に入りの作家さん。
北陸のある漁港近くの焼肉店に勤める38歳の女性。
本名は「菊子」なのですが、その姿形で客達からは「肉子」ちゃんと呼ばれています。
小学校高学年になる娘は母親には似ても似つかない程ほっそりとして、ぱっちりの目。
なぜか母親は娘に読み方の同じ「喜久子」と名付けていました。
母親は娘を「キクりん」と呼び、客達も小学校のクラスメートも同じように呼びます。
このキクりんが「私」で彼女の目を通して日常を綴りながら物語が展開していきます。
ひなびた港町に住む人々、学校の交友関係、知性の皆無な肉子ちゃんを語る喜久子。
風変わりなあだ名の母を持つ少女が、小さな共同体で大人になっていく物語。
かなり強烈なキャラの肉子ちゃんは底抜けに明るく全てに対し肯定的。
一方、娘の喜久子ちゃんは学校でのナイーブな諸問題に揺れ動きます。
このキクりんは母親を、他の人達と同じように肉子ちゃんと呼びます。
一人称小説ですが、この呼び方から基本である親子の関係に距離感が生まれます。
それがひいては、他も含めた登場人物達に自立性を生む事になっています。
悲惨な人生を歩んできた肉子ちゃんですが、彼女が喋り出すとどれも滑稽な話に。
明るいのか抜けているのか。そんな彼女の来し方をリズム良く短い文体で語ります。
その後半からラストに向かって加速する物語の圧倒的な濃密さに一気に読破。
肉子ちゃんが全ての出来事に対し肯定的で人の目を一切気にしない強さの理由は何か。
人が生きて行く上で重要なものは何かを感じさせてくれます。
登場人物を暖かく見守る視線に著者のこの物語に込めた想いが感じられました。
西加奈子さんの作品を読むといつも、与えられた環境や状況がどんなものあっても、
それを自分の言い訳や誰かへの攻撃の材料にしないで生きられる勇気がもらえます。
「漁港の肉子ちゃん」西加奈子さんの物語の持つ、強い力が伝わってくる作品です。

楽天からも購入できます。
「漁港の肉子ちゃん」西加奈子
「漁港の肉子ちゃん」西加奈子
- http://1iki.blog19.fc2.com/tb.php/2084-ed20acbd
トラックバック
「漁港の肉子ちゃん」を図書館で予約したのは昨年末、
確か毎日新聞夕刊でとりあげられていたはず、と記事を探しても見当たらない(++)
ようやく順番が来て表紙を見てあれま、イラス
西 加奈子 著
小学生のキクコは小さな漁港で暮らしている。お母さんはみんなから肉子ちゃんと呼ばれて親しまれているけれど、空気は読めないし、ピントのずれた事を言うし
★★★★ -------------------------------------------------------------------- 男に騙されてたどりついた北陸の港町。焼き肉屋「うをがし」で肉子ちゃんは働いてい る。太っていて、不細工で、とても明
本当の名前は菊子だけれど、太っているから皆が「肉子ちゃん」と呼ぶ。関西の下町で生まれ、16歳で大阪に出て、繁華街のスナックで働いて。男とくっついては男に逃げられ、流れ流 ...
今日も一日 お疲れ様でした~…
いやぁ…昨日、お得意先様で 不幸がありまして…
なにやらバタバタしている中で 嵐が吹き荒れたりして
今日はあんまり平和じゃない 一日でし
漁港の肉子ちゃん西 加奈子 幻冬舎 2011-09by G-Tools
肉子ちゃん、本名は菊子だけど、太っているから「肉」子と呼ばれている。
北陸の小さな港町にある、焼肉屋「うをがし」で住み込み...
焼肉屋で働く明るく元気な肉子ちゃんとその全然似ていない可愛い娘きくりんのお話です。太っているし変な洋服だし声も態度も大きいし、でも何故かみんなに愛されている肉子ちゃんで...
勇気と希望を貰いました。
西さんは2冊読んでだけなので、少しづつ読みすすめて
みようと思っています。