数千人の人々を乗せて海を漂う“団地船”、永遠に朝が訪れない町、
“生態保存”された最後のニュータウン…喪失、絶望、再生―
もう一人の“私”が紡いでゆく、滑稽で哀しくて、少しだけ切ない九つの物語。
『失われた町』『刻まれない明日』に連なる“町”を、
気鋭の写真家との奇跡的なコラボレーションで描く連作短篇集。
やはり三崎亜記さんの世界。一見、登場人物や場所が繋がらない短編集です。
物語の中に次の物語のためのキーワードを語っているのが遊び心あふれる仕掛け。
白石ちえこさんの写真とのコラボレーションで、これまでよりリアル度が増した印象です。
三崎亜紀のフィルターを通して見る世界は私たちが知っている世界と少しズレてます。
最初は笑っていたのに、ふと確固とした地面が失われていることに気がつくのです。
ハッとしたところで、夢から目覚めるように現実に戻されます。
戻ってきた来た世界はフィルターを通して見る前の普通の世界。
なのに、ほんの些細ですが決定的な何かが違う感じ。今回もそんな物語が続きます。
独特の世界観によって、現実世界とのギャップを感じずにはいられない内容。
時々、わざとぼかしている性別によっても物語に奥行きが出ています。
淡々とした描写の中にも、浮き彫りになる、人と人との関係。
どんな時代、どんな世界でも人を信じるのは難しいし、人を愛するのは尊いはず。
でも、それを貫こうとするのは、なんとも切ないことなのです。
どの作品も、とても壊れやすいガラス細工のような緻密なストーリー。
両手でそっと包み込みたくなるような、切なさと哀しさと温かさに満ちています。
「海に沈んだ町」三崎亜記さんの三崎ワールドは今回も健在。オススメです。
目次
遊園地の幽霊/海に沈んだ町/団地船/四時八分/彼の影/ペア/橋/巣箱/ニュータウン

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「海に沈んだ町」三崎亜記
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嗚呼、三崎亜記の世界の小説だな。リアルな世界を書いていないのに逆にリアルな世界を感じてしまう不思議な物語。そんな不思議な情景とリンクしているような現実の写真が挟み込まれ...
海に沈んだ町 作者: 三崎亜記,白石ちえこ 出版社/メーカー: 朝日新聞出版 発売日: 2011/01 メディア: 単行本 クリック: 20回 この商品を含むブログ (22件) を見る 連作短編集。 彼の他の短編集
作品名:海に沈んだ町
作者名:三崎亜記
あらすじ
数千人の人々を乗せて海を漂う“団地船”
永遠に朝が訪れない町
“生態保存”された最後のニュータウン
喪失、絶望、
廃園した遊園地跡に出来た住宅街に住む人々が見る遊園地の夢。夢の中で見かけた人と、現実に出会う・・・。海が来て、沈んでしまった町を訪れる人。港へとやって来た団地船を見に訪...
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