女ごころを書いたら、女子以上。ダメ男を書いたら、日本一!
男主人公5人VS女主人公5人で贈る、長嶋有ひとり紅白歌合戦。
デビュー10周年を迎える、10冊目の単行本!
それぞれ異なる雑誌に掲載された10篇を納めた短編集です。
時代劇とボクシングでなく、丹下左膳と丹下段平の違いから入る「丹下」、
80年代アイドルネタをスパイスにした「マラソンをさぼる」、
戦隊物とデスノートが伏線(?)になっている「山根と六郎」、
シリアスな展開なのにまさかネグレクト?と思わせる夕方の再放送時間…等、全十篇。
テレビ番組にアニメや漫画など狭義のオタク的なものへの理解と愛着がいっぱい。
それらを見て育った人だと、にやにやしながら楽しめるのでは?と思える一冊。
オタク度テストを含ませた小説なのかもと読書中、ずっと感じていました。
作者と同世代の人には共通言語と成りえるので、すっと本文に入って行けるでしょう。
一方、60~80年代のロックやジャズを扱った小説は多く見受けられますが、
90年代のJPOPや漫画を堂々と出してくるのは長島有さんくらいです。
90年代邦楽には他の音楽では代用できない輝きとカッコ悪さがあるんです。
舞台は全て日常。どこにでもありそうな光景を描いていますが何故か後を引く内容。
ちょっと落ち込んだり、逆にクスッと笑わされたり、これいいな!と思ったり。
空気感も含め、そこら辺をちゃんと「文字」にできるのは才能と感じました。
作品中に面白いものや懐かしいものがいろいろ出てきて素直に面白かったです。
こんなに可笑しくて切ない、一行たりとも退屈しない小説は珍しいと思います。
個人的なお勧めは若夫婦の日常を描いた「ファットスプレッド」、
前職同僚の披露宴に参加することになった男性を描いた「祝福」の2編。
どちらも読後にちょっと心に温かいものを感じることができると思います。
「祝福」長島有さんのサブカルチャー小説。リラックスして読める一冊です。

楽天からも購入できます。
「祝福」長島有
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