関西最大の都市・浪速府で新型インフルエンザ「キャメル」患者が発生した。
経済封鎖による壊滅的打撃、やがて仄見える巨大な陰謀。
ナニワの風雲児・村雨府知事は、危機を打開できるのか?
村雨が目論む、この国を破滅から救うための秘策とは――。
近未来を透視するメディカル・サスペンス!
新型インフルエンザ、地方独立、医療問題と色々な題材を取り入れた秀作。
診療所から始まる新型インフルエンザ騒動、浪速から東京への電撃的ガサ入れ。
時系列をさかのぼると実はある思惑で繋がっている、関係ないようなふたつの事件。
表に出ない大きな動きが、日本の中で蠢いている様子がうかがえるという内容です。
病院内の事件を病院の中で解決したこれまでとは、だいぶスケールが違います。
道州制の処方箋として医療立国があり、その手段としてAIが位置づけられる構図。
話が大きすぎて呆気に取られる感じもありますが、診療所の小さな身近さと、
政治の大きな俯瞰図を、目線を比較して味わうのも一興といえそうです。
ただ、この単品では未完結で、多くの海堂作品が作り出す全体図のパーツのひとつ。
他の作品を読み登場人物の関係性、立ち位置などを覚えていれば、より面白いです。
既に海堂作品を読破済で登場人物に愛着が湧いているレベルの人であれば、
今作活躍の彦根やゲスト的出演の白鳥、益村市長を通して見え隠れする極北市の影、
相変わらず怪しい斑鳩など、とてもファン心理をくすぐる出番が楽しめます。
主人公が3人いるような構成で、飽きずに読みたい私にはつらいです。
後半、現地視察から始まる彦根と村雨知事の問答シーンは個人的にマイナスの印象。
他に登場人物がいても、ほぼ村雨知事が問い彦根が導くという形に収まっています。
質問と解説の会話のやり取りが淡々と続き、反対勢力のアクションもないことで、
内容の是非は別としてすべてこれで解決するような一方的賛辞を感じてしまいます。
今までの作品を通して見える海堂先生の主張は、とても理解できるものです。
歯切れもよく応援したくなる所ですが、結局何も変わらない終わり方が不満。
エンタメの舞台に載せる以上、もう少し捻って欲しかったかなと残念に思います。
この作者が持つキャラクターの面白さ、スピード感は健在です。
珍らしく、終わり方が明るく次に繋がる話になっているのが良いです。
400ページ近くの大作をあっさり読み切れる読みやすさはすばらしいと思います。
現在の日本の情勢を十分に反映した作品で、医療だけでなく、
この国の自治そのものを考えさせ、夢を見させてくれる作品でした。
村雨知事の夢「機中八策」は是非、現実の世界で実現して欲しいなと思いました。
日本分割「ナニワ・モンスター」海堂尊さんの壮大な近未来フィクションです。

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「ナニワ・モンスター」海堂尊
「ナニワ・モンスター」海堂尊
「ブレイズメス1990」の内容はすっかり忘れていますが……
もうそろそろ私、桜宮サーガは読傷気味で……
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