島に一本しかない紫焔樹。森の奥の聖域に入ることを許されたユナは、
かつて〈果樹の巫女〉と呼ばれた少女だった……。
呪術的な南洋の島の世界を、自由な語りで高らかに飛翔する、
新たな神話的物語の誕生!
「今年で120歳」というおねえさんと出逢ったタカシは、
彼女に連れられ、遠く離れた南の島で暮らすことになる。
多様な声と土地の呪力にみちびかれた、めくるめく魔術的世界。
物語の舞台は無数の島が浮かぶ南太平洋のどこかにあるトロンバス島。
不思議な魔法の力が働いている異世界トロンバス島をめぐる話を収めた連作短編集。
タカシ少年が呪術師ユナさんと出会い、トロンバス島で暮らすことになる表題作。
「紫焔樹(しえんじゅ)の島」「十字路のピンクの廟(びょう)」「雲の眠る海」
「蛸漁師(たこりょうし)」「まどろみのティユルさん」「夜の果樹園」の七話。
くどすぎず、それでいて絵本のように頭の中に鮮やかに浮かぶ巧みな背景描写。
多すぎず少なすぎず説明口調でないのに、世界そのものをたくみに解説した会話。
何の前触れもなく自然に異次元に連れていく、そんな力を持つ不思議な短編集です。
どの話も登場人物がどこかでゆるやかにリンクし合っているのも面白いです。
全体として見れば、トロンバス島ほかの異世界ワールドの作品集になっています。
長い尻尾を生やしたトロンバス島の主みたいな存在のトイトイ様、
真ん丸の目と三日月形の口をした木像の人形、
マンゴーやパパイア、ドリアンといった果実の頭をしたフルーツ人間など、
登場する奇妙な生き物が、不思議に悪夢めいた味わいを醸し出したのも印象的。
登場人物が見る悪夢、夜の闇がうすく世界の背後にかかっている魔術めいた雰囲気、
その世界にのみ働いている特異なルールに支配された雰囲気が魅力的でしたね。
怖い話あり、かわいい話あり、センチメンタルな話ありの恒川ワールドを堪能。
南の島で、さまざまな物語に囲まれながらゆっくりと暮らしてみたくなりました。
この多島世界にはまだまだ面白い、不思議の物語が眠っていそうです。
続編出ないかな。実は120歳になるという呪術師のユナさんにまた会いたいです。
「南の子供が夜いくところ」恒川光太郎さんの本当に不思議な気持ちになる本です。

楽天からも購入できます。
「南の子供が夜いくところ」恒川光太郎
「南の子供が夜いくところ」恒川光太郎
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恒川作品、ホントいいですよね。
最新刊の「私はフーイー」も図書館に入荷したら借りて読もうと思います♪