あれから三年―。白石誓は、たった一人の日本人選手として、
ツール・ド・フランスの舞台に立っていた。
だが、すぐさま彼は、チームの存亡を賭けた駆け引きに巻き込まれ、
外からは見えないプロスポーツの深淵を知る。
そしてまた惨劇が…。ここは本当に「楽園」なのだろうか?
過酷なレースを走り抜けた白石誓が見出した結論とは。
あれから三年―。白石誓は唯一の日本人選手として世界最高峰の舞台、
ツール・ド・フランスに挑む。
しかし、スポンサー獲得をめぐる駆け引きで監督と対立。
競合チームの若きエースにまつわる黒い噂には動揺を隠せない。
そして、友情が新たな惨劇を招く…。目指すゴールは「楽園」なのか?
前作を上回る興奮と感動、熱い想いが疾走する人間ドラマ。
前作はミステリーの魅力と自転車競技の奥深さを両立させた素晴らしい作品でした。
本作品「エデン」も引き込まれて読ませる、質の高い作品になっていると思います。
今作はミステリー性より自転車競技に向き合う主人公の生き様が中心となっている物語。
ツール・ド・フランスの模様が初日から徐々に主人公視点で描かれています。
やっぱりこうして読んでいると、他のスポーツとは異なる競技であることがわかります。
専門用語もチラチラ出てきますが、わからなくても読めるのもまた魅力のひとつかなと。
前作を読まなくてもあまり気にならない、全体的に味わい深い佳作になっています。
後味が苦かった自己犠牲がテーマの前作に対して、本作には衝撃の結末はないです。
が、結末まで山あり谷ありのドラマを用意していて自転車競技の楽しみ方も分かるし、
海外で一人で活躍する日本人の孤独、不安、そして孤高さが良く描かれています。
プロ・スポーツの魅力(それがエデンかな)と、去る時の悲しみも表現されています。
新たな僚友、フィンランドのミッコやフランス期待の星ニコラとの交友も楽しいです。
ニコラが時折つぶやく陰りのある言葉が、終盤で鮮やかに謎解きされるサプライズ。
主人公・白石誓(チカ)の考えやスタンスに好感が持てるのもいいですね。
色々悩みながらも異国の地で孤軍奮闘する姿は、読んでいて感情移入しやすいです。
超一流というわけではなく一歩引いた所にいる描写が親近感を与えていると思います。
彼の信念に、「うんうん」と読んでいてひとり納得してしまいました。
過酷な「エデン」近藤史恵さんの力量を感じさせる充実した作品です。
「エデン」近藤史恵
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