夫を何者かに殺された藍染屋の女将は、同じような事情を抱える女たちと出会い……。
女四人の活躍と心情を、気鋭が描く痛快時代小説。
仇討ちに挑む四人の女。それぞれの愛憎の行方は…。
楽しくも切ない、エンタテインメント時代小説。
東雲屋の夫殺害の証拠をつかもうとする、紺屋(藍染屋)の紫屋の妻「環(たまき)」。
洗濯婆の「おくめ」と、男相手の商売をしている色気の溢れた「お唄」を仲間に。
そして、兄を殺した仇を探して東雲屋にやってきた侍姿の伊織こと「伊予」。
環を中心に集まってきます。それぞれの思いから東雲屋を探る四人の女性。
東雲屋の主人は、ふてぶてしく憎々しくて、いかにも悪役という雰囲気が濃厚。
でもしたたかで、なかなか尻尾を現さない。そこに伊織が追う男もかくまわれています。
登場人物が、どこか人生の影や過ち、悲しみを背負っているという設定が良いです。
それぞれに、悩み、苦しんでいて、せつなくなってしまいます。
女であることを、否定したがっている伊織と、武器にして生きているかのようなお唄。
ふたりの掛け合いが、反発しあいながらも、どこか微笑ましく見えます。
紺屋の主であった環の夫。仕事にも熱心で、熱が入りすぎるところはあっても、
環をとても大事にしていた様子がうかがえるだけに、その死が痛ましいです。
素晴らしい腕の持ち主の夫が生み出したはずの濃い藍色。殺害現場から消えた見本の布。
商売敵でもある東雲屋の存在が、やはり気になる。もしや、その藍色が動機なのか?。
それぞれに自分の方法を発揮しながら、「環」の夫を殺した犯人を探っていきます。
いくつかのどんでん返しが仕組まれて物語が展開されていく構成です。
そして、「環」の夫殺しの犯人と「伊予」の兄殺しの犯人には繋がりがあること。
阿波徳島藩の権力掌握を狙う家老と藍玉の独占的取り扱いを目論む商人の悪計が潜在。
意外な人物が実行犯だったり。どんでん返しのどんでん返しという構成が面白いです。
また、どうにもならない相手に惚れてしまう女心や親子の情愛も豊かに描かれています。
女たちが仕掛ける一世一代の勝負。その結果、明らかになる真相、心情。
きっちりかたはついたと言っていいと思えます。それぞれの道を見付けて歩き出す四人。
先行きに苦労もあるだろうけれど、幸多かれと祈らずにいられませんでした。
「四色の藍」西條奈加さんの文章の柔らかさを感じさせてくれるいい作品です。
「四色の藍」西條奈加
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