興味のおもむくまま、今日の気分のまま。大好きな藤子・F・不二雄先生のこと、
はじめて書いた小説のこと、幼い頃の思い出、趣味のショッピング、料理、映画のこと…。
デビューから書きためた33編のエッセイとルポ10編に加え、
ショートショートと短編小説4編を特別収録。
新鋭作家・辻村深月の興味の赴くままに、人気アニメから伝統芸能まで
日本の新(ネオ)カルチャーの現場を歩く初のルポ&エッセイ集。
各紙誌へのコラムも満載、ショートショート・短編小説を特別収録。
目次
1 ネオカルチャー新発見(支えは藤子・F・不二雄さんの人格 ドラえもん/
レッツ・のう能!のうのう能 ほか)/
2 おおむね本と映画の宝箱(私をまっすぐ映すもの/
オマージュのためのショートストーリー&エッセイ ほか)/
3 四次元の世界へ(あしたも、ともだち/
世界で一番好きなラブストーリー『パーマン』 ほか)/
4 特別収録 ショートショート&短編小説(彼女のいた場所/写真選び ほか)/
5 女子とトホホと、そんな日々(a day in my life/
私をハイにする…-ウッカリショッピング ほか)
新聞連載のエッセイ、ショートショートなどを集めた本です。
最初思ったほど、すごく個人的な趣味や嗜好などが書かれているわけではなかったです。
「ネオカルチャー新発見」の章は、好きな藤子・F・不二雄さんのことがメイン。
あと原宿Qポットのアクセサリー、ポケモン、ガンダムなど10本の軽めエッセイです。
ネオではなく一般的で、それほど個性的な鋭い見方が入っているわけでもないです。
ほかには「壁」恐怖症のような思い出エッセイは、おおっと思いました。
新聞や雑誌掲載ということもあってか、長さもいろいろ。全体に薄味です。
その中で楽しめたのは、甲州弁を標準だと思っていた自分に気づくという話。
ガンダムのシャアが「なまっている」とずっと思っていたこと。
思わず「認めたくないものだな、若さ故の過ちというものは」とつぶやいていました。
一冊全体ではフィクションで短編の「さくら日和」と「七胴落とし」が収穫でした。
前者はたい焼きにまつわる小学生の女の子の思い出物語。春の情景に溶けこむように、
お母さんとの対話で子ども特有の小さな違和感や居心地の悪さを描いています。
後者はミャウダさんという猫が子どもたちのつらい感情や痛さを落としてくれる話。
ファンタジー好きには最適。猫という温かい生物に対する作者の描写も愛おしいです。
唐突ですが「さよなら銀河鉄道999」の鉄郎の盟友ミヤウダーを思い出しました。
成長物語ということだけでなく、不思議な読後感のある物語です。

「幻影師アイゼンハイム」19世紀末ウィーンが舞台の恋愛要素をからめたミステリ映画。
映画の雰囲気はとてもいいし、クラシカルな美術とかセットとか好みでした。
サブカル転じて「ネオカル日和」辻村深月さんのデビューから今までがわかる一冊です。
楽天からも購入できます。


「ネオカル日和」辻村深月
[C19052]