タクシードライバーの磐田速人は、ある日「入日村」という村に迷い込む。
そこは、河童や天狗などの妖たちが闊歩する不思議な村だった。
村で出会った少女・彩葉は、ここは現世とあの世との狭間に漂っている場所だという。
また、黄泉の国へと続く坂を上り切れずに、さまよう魂が増えているというのだ。
現世に戻れなくなった速人は、彩葉と共に魂の「未練」を解く仕事を始める羽目に…。
中盤までは、村での生活と亡者を導く仕事を交互に描く連作短編。
前者では、村人や村に現れる妖や神々との交流、
後者では亡者の未練を取り除く方法を見つけ出そうとする速人と彩葉の姿を描きます。
「死者」と「未練」の組み合わせは切ないお話が多くなります。
この世とあの世の狭間に存在する者たちとの交流の描写が魅力的。
このまま切なくも暖かいお話の連作と思ったら中盤からは村人の複雑な心境を描いたり、
大国さんの黒い面が見え隠れするなど思わせぶりな展開になり、一気に意外なラストへ。
比較的テンポが早くキャラクターも多いので、物語としては全体的に説明不足な感じ。
謎の多い「あの世」鍛冶の神さま「だいだらさん」や小心者の土地神さま「玉置さん」。
魅力的な世界観やキャラクターの背景について、もっと深い描写を読みたかったです。
ハヤさんと彩葉以外の人物がどんな考えに基づいて行動していたのか、
もう少し書きこんでくれたらなと思いましたが、それでも十分面白かったです。
「黄泉坂案内人」仁木英之さんのよくありそうな設定なのに独特で面白い異世界小説です。
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「黄泉坂案内人」仁木英之
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この世とあの世は接していない。
坂があり、川があり、役所があり、
晴れてあの世の住人になるには、
なかなか長い行程を踏む必要が...
『黄泉坂案内人』 著・仁木英之 角川書店 『僕僕先生』シリーズの仁木英之氏による伝奇ファンタジー。
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