装幀は坂川栄治・田中久子(坂川事務所)。装画は水上多摩江(題字共)。
「読売新聞」夕刊2005年11月21日から2006年7月24日掲載。
逃げて、逃げて、逃げのびたら、私はあなたの母になれるだろうか--
理性をゆるがす愛があり、罪にもそそぐ光があった。
家族という枠組みの意味を探る、著者初めての長篇サスペンス。
(「BOOK」データベースより)
1985年2月。
主人公で語り手の野々宮希和子は、不倫相手の生後6ヵ月の娘を誘拐。
薫と名づけ逃避行を続けます。日記形式で克明につづられる日々。
成長につれて、注がれる愛情と信頼で温かな親子の関係を育む希和子と薫。
希和子の母になりたい気持ち、他の何を犠牲にしてもこの子だけは守るという
強い意志が痛いほど伝わってきます。
はらはらして見守りながら、犯罪であってもこの幸せが続いてほしいと思いました。
そして20年後の現在。主人公で語り手は成人した薫(秋山恵理菜)。
逃亡先での知り合いという、マロンこと安藤千草が訪ねてきて取材の依頼。
薫が戻ってから事件が家族にもたらした影と、現実の厳しさにつらくなりました。
事件に翻弄されてきた薫(なんで、私だったの?)に、胸が締め付けられるようでした。
何気ない言葉から薫はある決断をして自分の人生に向き合います。
七日目に死を迎えるはずの蝉が八日目も生きていたら…。
あるべき人生から、大きく逸脱した世界を生きることになったら…。
そこには孤独やさびしさがあり、自分だけが見ることができる世界もある。
そして懸命に生きる。―タイトルの暗示が深いです(p321)。
始めはちょっと身構えてしまいましたが、今回も生活の客観的な描写や
会話のやりとりの面白い場面、登場人物への強い共感がありました。
掘り下げられていく二人のリアルな心象に、母親ってなんだろう、
家族ってなんだろう、血の繋がりってなんだろうって、改めて考えさせられました。
最後のほうで、薫が港で思い出す言葉(p336)に思わず目頭が熱くなりました。
印象に残ったフレーズ:茶化すみたいに、なぐさめるみたいに、
認めるみたいに、許すみたいに、(p6)/
(自分が悪くないときは)謝らなくてもいい。きみはたくましく生きている。(p248)/
ここではない場所に私を連れ出せるのは私だけ。(p289)/
憎みたくなんかなかったんだ。(中略)
憎むことは私を楽にはしたが、狭く窮屈な場所に閉じ込めた。
憎めば憎むほど、その場所はどんどん私を圧迫した。(p330)
…そして、あの島に行ってみたくなりました。
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八日目の蝉 角田光代
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著者初のサスペンスという文句につられて読んでみました。そうしたらですね、もう参ったガツンとやられました。家族というものの形、あり方を問うのにこういう方法を取るとは。ある意味えげつない。全編を通して感じるのはそれが偽りであれ何であれあまりにも深い愛情の発..
蝉は、7年土の中にいて、やっと外に出られても7日で死んでしまう・・。その蝉と、この小説の登場人物の人生を、かぶらせて描く20数年間のお話。
八日目の蝉角田 光代 2007/3/25発行 中央公論新社 P.346 ¥1,680★★★★★ ここではない場所に私を連れ出せるのは私だけ――かつて抱いた気持ちが唐突によみがえる。 そうだ、どこかにいきたいと願うのだったら、だれも連れていってなんかくれやし
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☆☆☆☆・ 八日目の蝉角田 光代 (2007/03)中央公論新社 この商品の詳細を見る逃げて、逃げて、逃げのびたら、私はあなたの母になれるだろうか--理性をゆるがす愛があり、罪にもそそぐ光があった。家族という枠組みの意
「茶化すみたいに、認めるみたいに、なぐさめるみたいに、許すみたいに」
シェアブログ1152に投稿これは凄い!!角田さんの新境地です。いつもの角田さんテイストとは一味も二味も違う。新境地でありながらも、リアルな突き刺さるような心理描写は、ますます磨きがかかった印象。誘拐した
八日目の蝉 角田 光代著/ 逃げて逃げてまた逃げる。 希和子の逃亡の先に何が待っているのか。 それを見届けたいがために、ひたすら読者は希和子を追う。 八日目の蝉posted with 簡単リンクくん at 2
これは面白かった…今までの角田さんとちょっと違う。『対岸の彼女』なんかより全然好きだ。前半は不倫相手の妻が産んだ子を誘拐してしまった希和子の逃亡劇。次第に深くなる「薫」と名づけた子供への愛情。あまりに一途な希和子の母性に「どうか捕まらないで」と思ってしま
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角田 光代 八日目の蝉 逃げて、逃げて、逃げのびたら、私はあなたの母になれるだろうか--理性をゆるがす愛があり、罪にもそそぐ光があった。家族という枠組みの意味を探る、著者初めての長篇サスペンス。 ちょっと顔をみるだけ・・・そう思って忍び込んだ不倫
事件を起こす側に、自分がなってしまったら。いつも人事のように、「ふ~~ん」と思っている立場に、もし自分がなってしまったら。そういう小説は、多いんですが、この「赤ちゃん誘拐」っていうのは、女の盲点をつく、というか、本能的なところを責められるようで辛いですわ
八日目の蝉角田 光代送り火を怖がる薫に微笑む希和子の写真みどりいっぱいの山、きらきら輝く海色彩に溢れた香り濃い日々見たこともないのに文字を読んでいるのに目の前には緑いっぱいの晴れた日に泣き叫びながら産まれてくる子を喜んでる人々がいた不倫相手の子を誘拐しそ
すみません。今回はネタバレするかもです。これから読む方、今読んでる途中の方は読み終わってどうぞ是非是非ご覧ください。では、あらすじです(アマゾンの提供でお送りします)***********
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八日目の蝉角田光代 中央公論新社 2007年3月 野々宮希和子は、不倫した相手の留守宅に忍び込み、赤ん坊を見るだけのつもりが、誘拐してしまう。薫と名づけ自分の子として育てるが・・・・・・・・ 1章は、希和子の視点で、2章は、誘拐された子どもの視点で
エンターテインメント小説を対象にした第2回中央公論文芸賞は、「全編、ハラハラするようなリアリティーと迫力があり技も力もある小説」などと評価され、角田光代さんの「八日目の蝉」に満場一致で決まりました。 第2回中央公論文芸賞受賞作「八日目の蝉」は....
八日目の蝉角田 光代 (2007/03)中央公論新社この商品の詳細を見る
<私はこの子を知っている。この子も私を知っている>
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八日目の蝉 角田光代/中央公論新社逃げて、逃げて、逃げのびたら、私はあなたの母になれるだろうか--理性をゆるがす愛があり、罪にもそそぐ光があった。家族という枠組みの意味を探る、著者初めての長篇サスペンス。 私には三人の子があって、その三人のへその緒を大事に
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八日目の蝉(2007/03)角田 光代商品詳細を見る不倫相手の子どもを誘拐し、逃亡生活をはじめた野々宮希和子。産むことが叶わなかった我が子を重ね...
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「逃げて、逃げて、逃げのびたら、私はあなたの母になれるのだろうか」
というキャッチコピーは秀逸だと思う。
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「八日目の蝉」 角田光代
希和子は不倫相手の家から生後6ヶ月の赤ちゃんを連れ去り薫と名づけ逃亡する・・・。
希和子がそんな行動に出たのは、不倫相手の子供を妊娠した挙句に堕胎させられ、不倫相手の妻に“空っぽのがらんどう”と呼ばれたのが深い深い傷になってい...
 内容(「BOOK」データベースより)逃げて、逃げて、逃げのびたら、私はあなたの母になれるのだろうか。理性をゆるがす愛があり、罪にもそそぐ光があった。角田光代が全力で挑む長篇サスペンス。
昨年、NHKで放送していた「私の1冊 日本の100冊」という番組で、光浦靖子さんが紹介していて存在を知った本です。中身については覚えていなかったんですが、光浦さんがテレビ越しに本書について熱弁していた姿が忘れられなくて、機会があったら読んでみよう、と思ってい...
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この本が私にとって初「角田」さんでしたが、何で今まで角田さんの本を読んでこなかったんだろうと後悔しました。