私たちがあの場所に沈めたものは、いったい何だったのだろう。
五十数年前、湖の底に消えた村。少年が知らない、少女の決意と家族の秘密。
誰もが生きていくため、必死に「嘘」をついている。
いま最もまぶしい作家が描く、成長と再生の物語。
老舗旅館の長男、中学校二年生の逸夫は、自分が“普通”で退屈なことを嘆いていた。
同級生の敦子は両親が離婚、級友からいじめを受け、誰より“普通”を欲していた。
文化祭をきっかけに、二人は言葉を交わすようになる。
「タイムカプセルの手紙、いっしょに取り替えない?」
敦子の頼みが、逸夫の世界を急に色付け始める。
だが、少女には秘めた決意があった。
逸夫の家族が抱える、湖に沈んだ秘密とは。
大切な人たちの中で、少年には何ができるのか。心に染みる人間ドラマ!
現在の物語の中に過去の場面を挿入しながら進んでいくバランスが絶妙です。
作中には時折り、人生について深く考えさせる表現が出てきます。
今回は著者の得意とする二転三転の展開はありませんでしたが、場面に力があります。
「人間である以上、誰しもが他人や自分そして家族にさえも嘘をついて生きている。
またはそうしなければ生きていけないのかもしれない」という、
深いテーマを根源にした、素晴らしい作品だと思いました。
少年の成長物語ですが、主人公の前進していこうという勇気には感動します。
絶望から希望へと少しずつ光に向かっていく、哀しくも美しい物語に心揺さぶられます。
涙の「水の柩」道尾秀介さんの心理描写が切なく、自然描写が美しい長編小説です。
「水の柩」道尾秀介
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道尾秀介著 2011年講談社刊行 初出 2010年〜2011年「小説現代」 表紙の絵や中扉の絵が綺麗。そして何より『水の柩』という題名が綺麗。ダムの底に埋まった子供の頃の体験、そして今苦し
水の柩 今年の元旦初売りで自分へのお年玉に購入した本である。
でも、なかなか読むにたどりつかず、第一章でつまづき…その間何冊かの読書を終え、いよいよ読み本に事欠き、再開…...
著者:道尾秀介
水の柩(2011/10/27)道尾 秀介商品詳細を見る
田舎の老舗旅館の長男・逸夫。普通で退屈な日々を嘆く彼は、クラスメイトの敦子から、ある提案を受ける、小学校の卒業記...
今はなきBSの週間ブックレビューで、作者が「ひつぎ」の漢字を「棺」ではなく「柩」にした意味を語っていたように思うのですが、すっかり忘れてしまっています (´・ω・`)
この作品
ミステリというジャンルに(過剰な)こだわりはない、といったようなことを、いつだったか作者が発言していたように思う。
本作もまた、普通小説(という言い方は実は好まないのだ
「道尾秀介」の長篇作品『水の柩』を読みました。
[水の柩]
『鬼の跫音』、『龍神の雨』、『球体の蛇』、『光媒の花』、『月の恋人―Moon Lovers』、『月と蟹』、『カササギたちの四季』に続き「道尾秀介」作品です。
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いま最も眩しい作家が描く、成長と再生の物語。
タイムカプセルに託した未来と、水没した村が封印した過去。
時計の針を動かす、...
水の棺
著者 道尾秀介
タイムカプセルに託した未来と、
水没した村が封印した過去。
時計の針を動かす、彼女の「嘘」。
平凡な毎日を憂う逸夫は文化祭をきっかけに同級生の敦子と言葉を交わすようになる。タイムカプセルの手紙を取り替えたいという彼女の頼みには秘めた真意があった。同じ頃、逸夫は祖母が五十年前にダムの底に沈めた「罪」の真実を知ってしまう。それぞれの「...
幸が薄そうな女の子とか書かせたら巧いでしょ。
やはりこの作者は、じめっとした森に転がっている石の裏側をめくったときの、虫が這い出すあの気色悪い感じ、そんな気配の小説がよく似合いますよね、
顔も暗そうだし