予約を取ることも難しい、評判のレストラン『ハライ』。
10月31日午後6時に、たまたま一緒に店にいた客たちの、それぞれの物語。
認知症の症状が出始めた老婦人、ビデオを撮っていないと部屋の外に出られない青年、
人の失敗の匂いを感じてしまう女性など、
その悩みと前に進もうとする気持ちとを、丹念にすくいとっていく。
足りないことを哀しまないで、足りないことで充たされてみる。
注目の「心の掬い手」が、しなやかに紡ぐ渾身作。
偶然、同じ時間に人気レストランの客となった人々の、
来店に至るまでのエピソードと前向きの決心。
今回の作品は物語の設定に加えて読みやすさもあるので、とてもいいです。
誰でも分け隔てなく迎えるレストラン・ハライに集う人々を描く連作短編集。
この本に出てくる6人の主人公たちは皆、心のどこかに傷を抱えています。
優しくて不器用で、歯車がちょっとずれてしまって生き難さを感じている人たち。
「自分には誰かの存在が足りないんじゃないか」「必要なはずなのに」と。
誰でも何かしら辛い思いを抱えて、さまざまに悩んだり苦しんだりしています。
作者はそんな人たちを見捨てません。彼らも人生を無為に投げ出したりしないのです。
提示されるのは、「何かが」「誰かが」足りないのは仕方がないということ。
実は人生において完璧な状態で歩き始められる局面はそれほど多くないこと。
だから自分から、もしくは誰かに背中を押されて、再生へと歩き出すのです。
抱える問題の象徴的な締めくくりにはレストラン・ハライの予約をする場面。
人々の話声や笑い声が静かに漂っている温かく明るいハライの様子を思い浮かべると、
そこにいる人々と同じように、勇気をもって日々過ごしていきたいなと思います。
そして、まわりにいる人々の支えを忘れないでいたいなとも感じられたのです。
ちなみに10月31日は私の誕生日。ハライにディナーの予約をしたくなりました。
「誰かが足りない」宮下奈都さんの、人生には希望が最も大事な宝物とわかる作品です。
楽天からも購入できます。

「誰かが足りない」宮下奈都
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 誰かが足りない 宮下奈都おいしいと評判のレストラン「ハライ」に行きたいと思う、行こうとする人たちの短編連作。 あらすじ(amazon)予約を取ることも難しい、評判の
誰かが足りない宮下 奈都 双葉社 2011-10-19by G-Tools
予約を取ることも難しい、評判のレストラン『ハライ』。
10月31日午後6時に、たまたま一緒に店にいた客たちの、それぞれの物語。
...
誰かが足りない(2011/10/19)宮下 奈都商品詳細を見る
30日。
前から気になってた作家さん、宮下奈都さん初読み。
すごく静かな感じの文章、読みやすく私にしては珍しく、
2時間ほ
駅のロータリーにある「おいしい」と評判のお店「ハライ」。 そのお店に10月31日18:00に、予約を入れた6組の予約に至るまでのお話。 「ハライ」というお店、洋食屋でいつも満員
JUGEMテーマ:小説全般 評価 ☆☆自分にとって大切な人を失い、喪失感を抱えている人達を描く短編集。誰かが足りないと思うことは、その人のかけがえのなさを知ってるからですよね
誰かが足りない 宮下奈都 著
もう先月だったか、先々月だったか記憶は定かではないけれど、
ラジオパーソナリティの川本エコさんがおススメ本として挙げてらした。
それがず
宮下奈都 『誰かが足りない』 (双葉社) 読み終わりました。
どうでもいいけど、抹茶アイスには一目置いている。
ファミレス「夢庵」で撮った一枚。
ソフトクリームと抹茶
誰かが足りない(2011/10/19)宮下 奈都商品詳細を見る
すごく久しぶりの読書感想文です。
うまく書けるか不安です。
元からそんなにうまくもないのですが。。。
手に取ったきっかけ
駅のロータリーにある「おいしい」と評判のお店「ハライ」。 そのお店に10月31日18:00に、予約を入れた6組の予約に至るまでのお話。 「ハライ」というお店、洋食屋でいつも満員、冒頭と終わりにしか登場しないけど、それだけに気になる。 誰かとの思いでに浸る…
わー、藍色さんは10月31日が誕生日なんですね~。
そうなるとより一層、作品への思い入れも強くなりますね。
今年の誕生日はぜひ「ハライ」でお誕生会をしてください♪