将来に漠然と不安を抱えている家具売場で働く女性が、同僚の年下男性が気になるころ、売場にかつての恋人がやってきて……(「踊り場で踊る」)。縫製工場に勤める大神は、若いころと違って事なかれ主義で働いていた。そこに、中学生たちが職場体験でやって来る。年下の同僚とともに、中学生の面倒を見るはめになった大神。そこで、ある問題が生じて―(「一匹羊」)。OL、女子高生、フリーター、元野球選手、主婦…相手にされなくても。変人に思われても。一歩踏み出すと、素敵な自分が見つかるかもしれない、それぞれの「明日が少し元気になれる」物語。表題作ほか、7編を収録。
「一人」を主なテーマにした人間の悲哀を凝縮させた短編集。
OL、女子高生、フリーター、元野球選手、主婦などなどを主人公に据えています。
全力投球というよりは肩の力を抜いた、ある意味で脱力系な筆致が今回の特徴。
二つ読み終わって今回はそれほど面白くないな、不調かなと思ったのですが、
「野和田さんのツグヲさん」から見事に印象が変わりました。さすが山本幸久さんです。
表題作は縫製工場でパタンナー業務を担当している大神亮治が主人公。
初訪問客が迷わないように羊のアドバルーンを目印として揚げるのが社の慣習。
中学生の会社見学で久しぶりに揚げることになり、真っ青な空に一匹だけ浮かぶ羊。
かつては納得出来ないことには上司に歯向かい、一匹狼と言われていた亮治ですが、
今ではアドバルーンの羊のように、迷子になった一匹の羊のようだと思います。
そんな亮治の心を知らない中学生から「今の仕事に満足してますか?」と聞かれて。
タイトルになっている「一匹羊」ですが、狼と言われていた大神亮治が牙を抜かれて、
まるで一匹狼が一匹羊になったと感じる場面は、共感が持てました。
いろんな世代のさまざまなシチュエーションの物語で飽きずに読めます。
それぞれに最後は前向きになれる作品集で、著者らしさが出ている短編集。
狼なんてこわくない/夜中に紫葉漬/野和田さん家のツグヲさん/感じてサンバ/
どきどき団/テディベアの恩返し/踊り場で踊る/一匹羊
一匹狼から「一匹羊」山本幸久さんの希望の持てる終わり方が好ましい短編集です。
「一匹羊」山本幸久
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☆☆☆ 著者:山本幸久 販売元:光文社 発売日:2011/10/20 内容(「BOOK」データベースより) 縫製工場に勤める大神は、若いころと違って事なかれ主義で働いていた。そこに、職場体
縫製工場に勤める大神は、若いころと違って事なかれ主義で働いていた。そこに、職場体験に中学生がやって来る。年下の同僚とともに、中学生の面倒を見るはめになった大神。そこで、...
各話のタイトルにもニヤリとしますね。
トラバ頂戴いたします♪