ずっと、とっておきたい物語がある―直木賞作家が紡ぐ、懐かしくて温かい連作短篇集。
「とにかく旅に出ることだ。世界は本当に広い……
今のこの世界だけでも広大無辺なのに、昔や未来、作られたものの世界まで数に入れたら、
本当に無限だよ」――それぞれの世界を「箱庭」に見立て、
短篇の名手が紡いだ物語が詰まった一冊。
白馬とともにさまざまな世界を旅する少年は、物語にあふれた世界で、
さまざまな「出合い」を経験する。
“出る"と噂の部屋(「ミッちゃんなんて、大キライ」)、
みんなから愛された豆腐売りの少年(「黄昏ラッパ」)、
世の中の流行を決めるマンモスに似た生き物(「神獣ハヤリスタリ」)、
ある女性編集者の不思議な体験(「『Automatic』のない世界」)、
雨の日だけ訪れる亡くなった孫(「秋の雨」)、
ぐうたらな大学生二人の奥義(「藤田クンと高木クン」)、
サンタクロースにそっくりの獣医(「クリスマスの犬」)などなど。
『かたみ歌』で読者の涙を誘った直木賞作家による、16篇のショート・ストーリー。
懐かしくて温かい気持ちになれる連作小説集。
目次
旅に出ないか/ミッちゃんなんて、大キライ/オツベルと象と宇宙人/暗闇カラス丸/
一冊図書館/さきのぞきそば/秋の雨/クリスマスの犬/
『Automatic』のない世界/夜歩き地蔵/神獣ハヤリスタリ/
藤田クンと高木クン/黄昏ラッパ/夕凪のころ/七号室の秘密/月の砂漠
ホラーを含めたファンタジックなストーリーが独特な持ち味の朱川さん。
いろんな要素が詰め込まれた16の物語で、怪奇幻想にユーモアをまぶした短編集。
化物や幽霊、異次元世界や宇宙人など、始まるごとに奇抜な物語に出会えます。
名作や童話を自由自在に換骨奪胎して作り変える中にも敬意を込めたパスティーシュ。
幽霊憑き物件に引越した作家が意外な理由で退去する「ミッちゃんなんて、大キライ」。
ふとしたことから、へこんでいたサラリーマンが幸運を得る「さきのぞきそば」。
悲しい思い出に捕らわれていたら、ある気配でわかった事に涙「秋の雨」。
振り込め詐欺を題材に、心を冷やしてから、ほんのり暖める「クリスマスの犬」。
不気味な読書体験になった「『Automatic』のない世界」と「夜歩き地蔵」。
会話で、ちょっとひねってて面白い「藤田クンと高木クン」。
純粋な豆腐売りの少年が印象的な「黄昏ラッパ」。
意図して配置したと思える、うっすらと繋がりのある部分が時おり顔を出します。
それがひとつの円環ワールドになっていくのもなかなかの仕掛け。
森の中、出会う者みんなから「旅に出ないか」と声をかけられ、旅に出た僕。
そんな出だしの第一話が最後の第十六話で見事にひとつのサークルに繋がります。
「箱庭旅団」朱川湊人さんのタイトルに込められた意図になるほどと納得です。
楽天からも購入できます。

「箱庭旅団」朱川湊人
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