レトルト食品工場に勤める若宮は鬱屈を感じていた。
花火大会の夜、少女・花歩を殺めてしまう。
花歩は母・理絵とともに、被害者が加害者と向き合う修復的司法に携わり、
犯罪被害者支援にかかわっていた。
13歳の娘を殺された理絵のもとに、犯人逮捕の知らせがもたらされる。
しかし容疑者の供述内容を知った理絵は真犯人は別にいると確信。
かつて理絵の教え子であった若宮は、殺人を告白しようとするが…。
驚愕のラスト、社会派ミステリー。
横溝正史ミステリ大賞受賞第一作。加害者の立場から殺人犯罪を描きます。
殺人事件の犯人である若宮忍。
若宮に殺害された娘の母親で小学校の校長を勤める町村理絵。
この二人の視点が交互に切り替わりながら物語が展開していきます。
殺人事件の犯人は最初から分かっている形式。
殺害に至った過程や、殺害したあとの罪の意識に苦しむ加害者の様子、
我が子を殺害された被害者の苦悩や、自分の教え子を信じたい気持ちなど、
事件関係者の心理がリアルに描かれています。
また、修復的司法という犯罪の被害者と加害者が対話をすることにより、
加害者の謝罪の気持ちを被害者に伝え、
被害者の痛みを和らげる活動の仲介役をしている町村理絵。
彼女が実際に娘を殺害された状況で修復的司法に関する考え方がどう変わるのか。
修復的司法の有効性についてもきちんと著者の意見を織り込んでいます。
社会派小説として修復的司法という非常に難しい問題に切り込んでいながら、
ミステリーとしても十分に満足の出来る仕上がりであり、
著者はまさに社会派ミステリーの期待の新星と言えると思います。
伏線の張りすぎやフェアでない書き方など、若干気になる箇所はありますが、
そうした部分を差し引いても、結末の見事さは圧巻でした。
「罪火」大門剛明さんの読み応えがある社会派ミステリーです。
楽天からも購入できます。

「罪火」大門剛明
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元派遣社員の男はなぜ、恩師の娘を殺めてしまったのか。
人間の大罪と葛藤、そして戦慄の結末!社会派推理の超新星がその才能を遺憾なく発揮した空前の問題作!!(角川HPより)
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著者:大門剛明
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かつて、人を殺めた過去を持つ若宮。そのせいもあってか、派遣労働での日々を送る彼は、恩師の娘・花歩に手をかける。花歩...
【送料無料】罪火 大門剛明さんの作品 伊勢神宮奉納全国花火大会の夜に殺人事件は起こった。被害者は中学2年生の町村花歩。犯人は元派遣社員・若宮忍。 花歩の母親、町村理絵はかつて若宮の恩師であり、一人暮らしの彼を家族ぐるみで気遣っていた。なのにな
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