下着が人の気持ちを変える? 弾ませる?
東京のファッションビルの一角でランジェリーショップ
「シフォン・リボン・シフォン」を成功させた水橋かなえは、
母の介護のため、活気をうしないつつある地方都市に戻ってきた。
まだ30代の彼女は、通信販売で固定客を得ていたこともあって、
この街でも店を開く。
機能的な下着から自由でチャーミングなものまで、いろいろ勢ぞろい。
さびれた商店街にできたこのちょっと気になるお店に、やがて人々は引き寄せられる。
かなえと同様に介護生活をおくる32歳の佐菜子、
米穀商店の女装する若い息子、旧家の時代を忘れられない年配の女性……。
レースやリボン、小さい花柄をあしらった下着が、彼らの人生をほのかに弾ませる。
母と娘の屈託、息子と父の反目、嫁と姑の気詰まりをなぜかほどいていく。
小さな人生模様がえがかれ、摩訶不思議でほのぼのとした小説集。
平凡な田舎町に突如できたお店を通じて様々な人の変化が描かれています。
4話構成で1話・2話はショップを訪れる客の話、3話・4話は女店主が主観の話。
前半ではお店は謎めいた雰囲気で、女店主は人生を達観した感じを受けます。
後半ではその女店主の人生が明らかになり、イメージがかなり変わりました。
事件が起きるわけではないけれど、日常的な心情の変化を読みやすく描いています。
合う下着を得ることでコンプレックスを超え、親の支配から脱却しようとする女性。
乳癌になったら下着はどうしていくのかなど、どれも興味深く読むことができました。
日用品で消耗品で芸術品のようなものもあり、性的な意味を持つこともある下着。
ランジェリーとは様々な捉え方ができるものということを認識しました。
トラウマを抱える登場人物が女主人との交わりの中で癒される、あるいは解放される。
田舎町にできたおしゃれなお店の女店主が傷ついた女性たちの心を優しく包み込む物語。
誰しもドラマがある人間の日常。家族のつながりが苦しいときもあるでしょう。
親と子の関係の描き方は、親離れ子離れなど考える人には共感できる部分もあるのでは。
問題はすべて解決したわけではないけど、希望を予感させる終わりに心が温まります。
「シフォン・リボン・シフォン」近藤史恵さんの下着の描写が芸術品のようです。
楽天からも購入できます。

「シフォン・リボン・シフォン」近藤史恵
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