テニスコートで、ナイフで刺された男の死体が発見された。
コートには内側から鍵が掛かり、周囲には高さ四メートルの金網が。
犯人が内側から鍵をかけ、わざわざ金網をよじのぼって逃げた!?そんなバカな!
不可解な事件の真相を、名探偵・十川一人が鮮やかに解明する。(表題作)
謎解きの楽しさとゆるーいユーモアがたっぷり詰め込まれた、デビュー作を含む初期傑作五編。
デビュー前の作品も含め五編を収めた初期短編集。すべて安楽椅子探偵ものです。
表題作以外は橘古書店のバイト学生、山根敏が友人から依頼される謎を解明するお話。
七尾幹夫をワトソン役にした軽妙な会話、そのずれっぷりもユーモラスです。
テニスコート密室、叙述トリック物、歴史物、建物消失物、時間トリック物と題材も豊富。
必要な情報は作中で開示されていて、いわゆるフェアなミステリーとなっています。
コミカルなやり取りの中に巧妙に織り込まれた伏線があり、数々の回収が楽しいです。
ふざけてるように見えて実は、意外と筋が通っていて本格してるのも良いです。
90年代発表のものでも、既に現在のスタイルが確立されているような印象を受けます。
間合いは楽しく、解決後は見事に割り切れて何も後に残さないスッキリ感が味わえる作風。
ゆるい空気も良いですね。こういうの読んだら、やっぱりいいなと素直に思う一作です。
綺麗に締める結末も気持ち良く好印象なのも東川ミステリの醍醐味のひとつだと思います。
あと光原百合さんの巻末解説が、各編ごとの見所を紹介しているのも良かったです。
「中途半端な密室」東川篤哉さんの今と変わらない、愉快でしっかりしたミステリです。
楽天からも購入できます。

「中途半端な密室」東川篤哉
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中途半端な密室 (光文社文庫)
片桐圭一と十川一人(とがわかずひと)は喫茶店で、
女性ばかりを狙った黒覆面の暴行魔や、
その暴行魔に襲われて失語症となった女性が警察に保護されたという新聞記事と、
その下の末次不動産の社長が変死したという記事について話題にします。
ポスターやCMでお馴染みの末次不動産の社長、
末次幸吉はテニスコートの中で、
腹の中にナイフが刺さった状態で死ん...
著者:東川篤哉
中途半端な密室 (光文社文庫)(2012/02/14)東川 篤哉商品詳細を見る
街のテニスコートで、地元で有名な不動産会社社長が変死した。コートは鍵がかかっており、周囲には4メートルの金網が……。完全なる密室とはいえないが不可解なその状況を、新聞記事を読んだ十川という男は推理して……
という表題作など、5編を収録した短編集。といいつつ、表題作以外は、幹夫&敏とい...
仕事で豊橋に行った帰り、ふらりとカルミアの書店に立ち寄って見つけた本です。
『えぇー、東川さんの作品が、最初から文庫本ですかぁ・・・うれしすぎます!』
文庫本は、持ち運びに便利ですし、寝転んで読むときも軽く、保存するのも場所をとりません。
今まで東川さんの作品は、文庫になるまで我慢できなくて、新書で買っていましたが、やはり文庫本が良いですね~
少し時代がかっているところもありましたが、
それが逆に魅力的に見える話ばかりでしたね。