仕事は別に苦じゃないけど、一生を捧げたいってわけではなし。
そろそろ結婚もしたいけど、彼氏が運命の人って感じもしない。
愛し合って一緒に住んでるのに、婚姻届を見ただけで顔がひきつるってどういうこと!?
好きなのにどうしてもすれ違う二人の胸の内を、いやんなるほどリアルに描く連作2篇。
ひりひり笑える同棲小説。
微妙な年頃の女性の行き場のない感情を独特の文体と飄々とした可笑しみで描き出す連作集。
「しょうがの味は熱い」「自然に、とてもスムーズに」の二篇を収録。
「しょうがの味は熱い」彼氏の絃ともう半年同棲している。
就職以来、いつも仕事に押しつぶされそうに疲弊している絃と、
大学院生として学校に通いながら家事をする奈世。
夕ご飯を済ませ、電気を消した部屋でニュースを見て、布団に入る。
並んで横たわる二人の思考はいつの間にかどんどんかけ離れてゆき……。
「同棲は結婚に続いていないみたいだ」
そんな“真理”にはたと気づいた奈世の選んだ道とは。
「自然に、とてもスムーズに」彼氏の絃とはもう三年同棲している。
営業の仕事を淡々とこなす彼と、短大を出てから一緒に暮らすようになった奈世は、
最近ではもう結婚していないこと忘れてしまうくらいだ。
疲れて帰ってくる彼にサプライズで花とケーキと婚姻届を用意してみたら……。
思いもよらぬシビアな拒絶に打ちのめされた奈世は二人の家を出て故郷へ。
一人娘の帰還を訝りつつも歓迎する両親との暮らしの中で
結婚への執着を失くしつつあった奈世のもとに絃が訪ねてくるが。
「草食系」だけではくくれない、煮え切らない男と煮詰まった女の、現代の同棲物語。
とほほと笑いつつ何かが吹っ切れる、
未婚/既婚すべての女性、そしてすべての迷える男性に贈る一冊です。
彼女と彼が交互に語り手になって、同じ出来事の受け止め方の違いが描かれています。
男性から見た同棲と結婚、仕事との摩擦を表すと同時に、女性から見た同棲と結婚も表現。
双方の気持ちが盛り上がっている間は新婚気分で毎日はバラ色。でも一緒に暮らすうちに、
段々開いていく愛情の温度差や、双方の結婚願望の落差に驚きや辛さやほろ苦さが。
男から見た結婚観と女から見た結婚観。男性目線と女性目線の違いは、ほとんど真逆。
ある意味、女性が男性を追い込んでいく様を、こんなにリアルに描いているのは凄いです。
結婚がゴールだと思っている女は結婚すれば状況が打破できると思い込んでいます。
結婚がスタートと思っている男は喧嘩が絶えない現状で結婚してもうまくいかないと予想。
どちらも自分が正しいと思うから、いくら話し合っても平行線で見付からない着地点。
性別が異なるとここまで考えが違うのか、ということが見事に表現されています。
でも流れている空気はやっぱり少し切なくて登場人物の不安な気持ちが胸に痛いです。
同棲と結婚に伴う様々なすれ違い。すれ違いも綿矢りささんの小説の主要なテーマかも。
「しょうがの味は熱い」綿矢りささんの言葉で細かく丁寧に描いたセンチメンタルな一冊。
楽天からも購入できます。

「しょうがの味は熱い」綿矢りさ
この人、タイトルにひねりがありそうでありませんからねえ。
逆に「大地のゲーム」はまったく違うモノでしたが・・・