ふっくら、ことこと、こんがり、とろり。
悲しい時もせつない時も、ごはんが元気を連れてくる。
おいしいものいろいろ詰め合わせ、心がほっこりあたたまる極上お料理小説。
パスタをこねながら、思い出す恋人のこと。
失敗したデートのあとで、家で一緒に食べるアンコウ鍋。
なかなか大きくならない我が子のために、ことことと煮る煮豆――。
いろいろな日に、ごはんを食べる。一人で、二人で、家族そろって。
誰にでもある、ごくふつうの日の料理の風景を繊細に丁寧に切り取ったドラマ。
とくべつな日ではないけれど、それぞれのごはんがごちそうになる、
人生のある一日を温かな筆致で描く掌編小説集。
ライフスタイルや会話が定型化して陳腐になりがちな、都会に住む人々の生活描写。
ですが、この作家、橋本紡さんは何気ない日常のワンシーンを巧みに描き出す名人です。
わかりやすい文体で端的に主人公の心理を描写。無駄のない文章と素朴な雰囲気。
決して目立つ派手なエンターテイメントというわけではありませんが、
現代でこうした、かけがえのない日常を淡々と書く作家さんはごく少数だと思います。
今回は料理をテーマに置いたショートストーリーをたくさん集めた一冊です。
各短編の扉にあるレシピが、おしゃれな雰囲気を醸し出しています。
人により好みは異なりそうですが、どの作品にも心温まるメッセージを含んでいます。
短編小説の肝である結末のキレもあって、一気に読んでしまいました。
読んでいて身近に感じられる短編集。読み終わり幸福で胸が満ち足りた気分になります。
ふとした時に読み返したくなる小説です。疲れている方にお勧めです。
改めて細やかな心の揺れ、特に幸福な時の表現が上手な作家さんだと思いました。
「今日のごちそう」橋本紡さんのささやかな幸せの瞬間を集めた爽やかで心躍る短編集。
楽天からも購入できます。

「今日のごちそう」橋本紡
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