中学二年のふたりが計画する「悲劇」の行方。
親の無理解、友人との関係に閉塞感を抱く「リア充」少女の小林アン。普通の中学生とは違う「特別な存在」となるために、同級生の「昆虫系」男子、徳川に自分が被害者となる殺人事件を依頼する。
中学二年生という狭い世界の息苦しさが伝わる内容。いつもイタイ人が登場する辻村作品。
ここまでわかりやすく中二病に侵された子が主人公なのは、たぶん初めてでしょう。
友達を失い者は誰も信じられないと打ちひしがれた彼女は事件を起こす事を思いつきます。
これも、この年齢にありがちな「世界に名を残したい」的な痛さでしょうか。
隣席のアングラオタクな徳川勝利と組んで、殺人者と殺害者としての信頼関係を築きます。
この彼もまた好きな子にかっこいい所を見せたいお年頃の中二病の子なんだと思います。
非日常に憧れる少年少女のやりとりが生々しく痛々しくて、描き方が上手です。
当時、何気ない言葉がどうにも我慢できなくて「あいつ外そう」てなことってありました。
私も外したことも外されたこともあり、経験があるからこそ胸が痛くなるのでしょうね。
大人になった今は誰と誰が付き合おうがトイレに一人で行こうがどうでもいいと思えます。
ですが、子供の頃は自分がいる世界においての最大の重要事項でしたよね。
辻村深月さんの小説は自分が隠しているネガティブな感情が剥き出しに現れます。
女子同士のやり取りは本当にリアル。隠れていた感情が現れ無理矢理に揺さぶられます。
それはネタとして笑える痛さではなく、リアルに胸が締め付けられるような痛さ。
相手の腹の中を探り合う、脆い世代の女の子の心情を書かせたら秀逸です。
事件の終わり方は常識的で予想通りとも言えますが、それでよいと思いました。
結末にも納得できるもので、後日談と最後の台詞が素敵。読後感も悪くなかったです。
物語のラストシーン10ページには、とてもホッとさせられました。
物騒な「オーダーメイド殺人クラブ」辻村深月さんの清々しい気持ちで読み終えた一冊。
及川由美さんで漫画化も。

楽天からも購入できます。


「オーダーメイド殺人クラブ」辻村深月
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読書感想「オーダーメイド殺人クラブ」
オーダーメイド殺人クラブ
【評価】★★★
あらすじ
オーダーメイド殺人クラブ/辻村深月 (集英社)
教室内ヒエラルキー上位の「リア充」女子グループに属する小林アン。中学二年生の四月、突然友人たちから無視されるが、同級生の「昆虫系」徳川勝利の言葉をきっかけに仲直りする。しかし、家や教室に絶望感を抱くアンは、自分と共通する美意識を感じる徳川に「私を殺して」と衝動的に依頼する。
ふたりが作る事件の結末とは――!
...
運動が得意な子って、苦手の子を圧倒的に差別するよな。今度もまたそんな遠い記憶を思い出させる本だったが、昆虫系男子にカテゴリー化する女子ってさすがだ。だけど何もかもが死に近かった十代の頃の感情って、こんなにも壊れやすいものだったんだ。しかし、いつの年代でも女子は怖い。
オーダーメイド殺人クラブ著者:辻村 深月販売元:集英社(2011-05-26)販売元:Amazon.co.jpクチコミを見る
2011年ミステリ小説の上位にランキングされそうな作品をもう一冊だけ読んでおこう ...
感想書きます。2のコメントより >クリハラさんの嗜好と合うかはわからないのですが、辻村深月さんの「オーダーメイド殺人クラブ」を推薦させていただきます!実は私も昨日読了したばかりなのですが(笑) まだ文庫が出ていないので、図書館で借りました;; 主人公二人に
物騒なタイトルだけど、久しぶりに面白い本だった。(辻村深月/著)
とても良質な青春小説で、そんじょそこらの純文学より純文学しちゃってるのだ。
確かに「私を殺して」というオーダーは現実的ではないのだけれど、
きっと作者はメフィスト賞出身という出自を忘れていないからなのだろう。
舞城王太郎といい、メフィスト賞からはいい人がでるね。
主人公は中二の女の子。
このくらいの年の女の子の...
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★★★☆☆
この先の少年Aたちがやるたび、ああ、あのパターンだよねっていう基本に、この先ずっとなるような、
そういう事件じゃなきゃ、起こす方にも死んだ方にも意味ない。
誰も起こしたことがない、新しいパターンじゃなきゃ……
中学2年の4...
すこし前に読んだお話ですが、若い男女のやりとりにキュンキュンした覚えがありますね。憎たらしいくらいキザやろお前ー!みたいな。
トラックバック頂いた自分の日記を見直してみたらすっごい悶えて叫んでましたわ自分。