元捜査一課の女刑事・魚住久江、42歳独身。
ある理由から一課復帰を拒み、所轄で十年。
今は練馬署強行犯係に勤務する。
その日、一人の父親から、子供が死亡し母親は行方不明との通報があった。
翌日、母親と名乗る女性が出頭したが(「袋の金魚」)。
女子大生が暴漢に襲われた。
捜査線上には彼女と不倫関係の大学准教授の名も挙がり……(「ドルチェ」)。
所轄を生きる、新・警察小説集第1弾。
42歳のベテラン女性刑事、魚住久江が解き明かす、いろんな事件を描いていきます
この本は主人公である久江の捜査を、しみじみと描いた刑事小説の連作短編小説集です。
女性刑事ということで「ストロベリーナイト」姫川刑事と比べてしまうのは仕方ないです。
どちらも直観力推理力に優れていて、腹に据えかねることには黙ってない所が似ています。
参考人の心に寄り添うような尋問場面が多いので魚住刑事の方が人情派っぽく見えます。
警視庁捜査一課への異動を拒み続けているのは、人が死ぬ前の事件に関わりたいからです。
発生する事件は通り魔とか家庭内での傷害など、一般市民が遭遇するような内容です。
事件の複雑性もありますが、動機を追ううちに関わる人達の人生模様が描き出されます。
凄惨な現場も大事件もないです。誉田さんの作品の中ではカジュアルな部類に入ります。
従来の文体と違って地味な印象ですが、安定感があって緊張感が持続します。
所轄組のささやかな抵抗を描く場面もあり捜査一課の事件追求とは別の面白さがあります。
姫川シリーズの展開と迫力を期待すると不足ですが市民生活に近い警察物として読めます。
暗い事件ばかりですが、それぞれの真相には意外性があって興味深かったです。
愉快な会話もあって、読後感はおおむね爽やかです。
ひとつひとつに良い物語が隠されていて、読み終わって余韻が残るという感じです。
「袋の金魚」「ドルチェ」「バスストップ」「誰のために」「ブルードパラサイト」
「愛したのが百年目」の六編を収録。松下由樹さん主演で2本2時間ドラマ化しています。
「ドルチェ」誉田哲也さんの書くヒロインが好きです。

「ドルチェ」誉田哲也
- http://1iki.blog19.fc2.com/tb.php/2437-09baea91
トラックバック
松下由紀さん主演の「ドルチェ」を見てみました。
以前「ストロベリーナイト」を見て以来、誉田哲也さんの作品には興味を持っています。この人の書くミステリーには毒がない~根底に人間に対する優しさと哀れみをたたえている~そんな印象を抱いていたので、それを松下由紀さんが演じるならまず間違いはないだろうと予約しておきました。
やはり~期待通りの温かいドラマに仕上がっていましたね。松下由紀さん演じる魚...
[単行本] ¥ 1,470
「あなたの痛み分かるとは言わない。練馬署強行犯係・魚住久江、四十二歳。肩身の狭い喫煙者、自分的には独身貴族。不器用なオトナの新ヒロイン誕生! ただ、何があっても生きていて。」
内容
彼女が捜査一課に戻らない理由。それは、人が殺されて始まる捜査より、誰かが死ぬ前の事件に係わりたいから。誰かが生きていてくれる...
人が死ぬ前の事件にかかわるため捜査一課をかたくなに拒む、
42歳独身の刑事、久江。
短編が6話収録されています。
あたたかい心をもつ彼女が犯人や被害者と向き合って、
いろいろな事件を解決していきます。
最後はこちらの心もあたたかくなって、
久江さんに幸せになってほしいなぁと思いました。
この話、続編が出ているようなので
これからの久江さんをもっと見ていきたいと思います。
...
ドルチェ 誉田哲也
彼女が捜査一課に戻らない理由。それは、人が殺されて始まる捜査より、誰かが死ぬ前の事件に係わりたいから。誰かが生きていてくれることが喜びだから。警視庁本部への復帰の誘いを断り続け、所轄を渡って十年が過ぎた。組織内でも人生でも、なぜか少しだけ脇道を歩いてしまう女刑事・魚住久江が主人公の全6編。(BOOKデータベースより)
【目次】
袋の金魚/ドルチェ...
コメントの投稿