それぞれの夜。それぞれの朝。
人気『ホリデー』シリーズから初のスピンアウト短編集。扉を開けて、彼らは出会った―。
「初めまして、お父さん」。
元ヤンでホストの沖田大和の生活が、しっかり者の小学生・進の登場で一変!
思いもよらず突然現れた息子と暮らすことになった大和は、
宅配便会社「ハニー・ビー・エクスプレス」のドライバーに転身するが……
荷物の世界も親子の世界も謎とトラブルの連続。
宅急便会社の仲間や、ホストクラブの経営者で女装のジャスミン、
ナンバーワンホストの雪夜らをも巻き込んでの大騒動を描いた
『ワーキング・ホリデー』が刊行されたのは2007年。
2012年にはその後の大和と進の物語を書いた『ウィンター・ホリデー』が、
同年には『ワーキング・ホリデー』が映画化され、
人気となっている「ホリデー」シリーズから誕生した、
初のスピンアウト短編集が本作『ホリデー・イン』である。
今回は親子の物語ではなく、彼らを取り巻く愛すべき人々のもうひとつの物語。
ジャスミン、雪夜、進らそれぞれを主人公にした6編が収録された。
01「ジャスミンの部屋」 …… クラブ経営者が拾った謎の中年男の正体は?
02「大東の彼女」 …… お気楽フリーターの大東の家族には実は重い過去があった
03「雪夜の朝」 …… 完璧すぎるホストの雪夜にだってムカつく相手はいるんだ!
04「ナナの好きなくちびる」 …… お嬢様ナナがクラブ・ジャスミンにはまった理由
05「前へ、進」 …… まだ見ぬ父を探し当てた小学生の進の目の前には――
06「ジャスミンの残像」 …… ヤンキーだった大和とジャスミンの出逢いの瞬間
どの作品も登場人物たちの過去の秘密を明かしつつ、
ハートウォーミングな結末は読者を暖かな気持にしてくれる。
『和菓子のアン』で大ブレイク中の坂木さんの、さらなる魅力を惹き出すお洒落な作品集だ。
夏と冬の親子を描いた「ホリデー」シリーズのスピンオフ作品集です。
ジャスミンとおっさんの出会いを描いた「ジャスミンの部屋」を含む6編を収録してます。
「ジャスミンの部屋」では若い男しか拾わないジャスミンが例外的に拾った男との出会い。
彼のひと言がジャスミンの心をとらえます。相手の何気ない言葉で心を動かされる一瞬。
その絶妙なタイミングを描いたこの話は、読んでいて心がほのぼのとしてきます。
「大東の彼女」では不幸と幸せについて悩んだ大東の心境が心に響きました。
考え始めたらきりがないし、幸不幸は同じ事でも人によって受け取り方が違うものです。
悩んで考え続けているよりも多少開き直ってしまうのも一つの方法かもしれないです。
「雪夜の朝」では王子様キャラだけど底なしの闇と得体が知れない怖さもある雪夜の心情。
クールな外見なのに四川料理でデトックス。汗ダラダラ 涙ボロボロに笑ってしまいました。
イケメンでも、さまざまな思いを心の中に抱えて生きていることがわかりました。
雪夜の心の内にあるものを見抜くジャスミンもいろいろ苦労してきたと感じられました。
「ナナの好きなくちびる」では人と出会うことで救われる場合があると思いました。
人づきあいに苦手意識があっても、それほどまで悪くないかもと感じることができました。
「前へ、進」はヤマトと会うと決めて行動した進。懐かしさに進の心境で新たな発見も。
「ジャスミンの残像」は、これまで知らなかったエピソードがほほえましかったです。
こんなヤマトをジャスミンはよく拾ったと感心。人の持つ「何か」を見抜けるのかも。
見た目はオカマだけど、エレガントなジャスミンで始まりジャスミンで終わるスピンオフ。
本編では描かれない、主な登場人物の内面を丁寧に描いていたので楽しめました。
このスピンオフから読んでも楽しめると思います。未読なら本編を読みたくなるでしょう。
読んでいると、心がやさしくなっていくようなスピンオフでした。表紙がとても好きです。
どの話も温もりを感じました。期待通りの心にしみる作品集。素敵で面白かったです。
あとがきを読んでいたら前作が読みたくなったので、3冊まとめて読み返しました。
「ホリデー・イン」坂木司さんの何度も楽しめるシリーズ。読んで大満足です。

楽天からも購入できます。

「ホリデー・イン」坂木司
雪夜は本編だといまいち何考えているかよめないキャラだったので、新鮮でしたね!
なんだかこれで終わりのような雰囲気ですが、大好きなシリーズなので続編を期待してしまいます。