病弱若だんなが兄やと交わした五つの約束とは?累計580万部「しゃばけ」シリーズ最新作!
えっ、若だんなが大店の跡取り息子たちと稼ぎの競い合いをすることになったってぇ!?
長崎屋には超不器用な女の子が花嫁修業に来るし、
幼なじみの栄吉が奉公する安野屋は生意気な新入りの小僧のおかげで大騒ぎ。
おまけに幽霊が猫に化けて……。
てんやわんやの第十二弾の鍵を握るのは、荼枳尼天様と「神の庭」!
「しゃばけ」シリーズの第12弾です。以下の五話構成です。
「跡取り三人」「こいさがし」「くたびれ砂糖」「みどりのたま」「たぶんねこ」。
基本的に各話が独立した謎解きスタイルになっているのはこれまで通りですが、今回は
「序」と「終」があり、「序」は既読者の回想とシリーズ未読者への案内を兼ねています。
最近しゃばけシリーズでは若だんな一太郎の恋や成長や周辺人物の変化などがありました。
それで結末がうかがえる感じがしたのですが、今回はそういったさびしさはなかったです。
少し変わった場所が舞台だったり視点が変わっていたりと脱マンネリの楽しさがありました。
最初の「跡取り三人」では、まんまことシリーズでお馴染みのあの人が登場します。
体が弱い一太郎が自分の力でしっかり稼ぐことができました。その成長に目を見張ります。
力仕事はできなくても鋭い洞察力や人とは違う発想からの行動が個性的で面白かったです。
こうしてみると、一太郎は意外と頭脳派で商才があるのかもしれないと思えます。
これまで何かとあてにしていた長崎屋の面々や兄やたち、生まれながらの裕福な環境に頼らず
近い年齢の若者たちと出会って、自分だけの力で競えて楽しかったのではないかと思います。
栄吉の頑張りと若だんなとの温かい友情がほのかにうかがえる場面は微笑ましかったです。
「こいさがし」は、長崎屋に行儀見習いに来た娘とお見合い騒動が起きるお話。
「くたびれ砂糖」は栄吉の修業先である安野家の傍若無人な新米小僧たちに翻弄されるお話。
読んでいて珍しく苛立ったりして、何か現代の世相を風刺しているようにも思われます。
「みどりのたま」は仁吉が記憶喪失になり、老いた妖狐が神の庭への望郷に巻き込まれます。
冒頭から読者を引き込む驚きの設定。古松の切ない願いが叶うのかどうか気になりました。
仁吉の秘めた想いの行方。成就するのか否か、とっても気になって仕方がなかったです。
表題作の「たぶんねこ」は、神の庭から幽霊が江戸に戻って仕事を探すお話。
今回も前作登場の妖、河童と貘が再登場しています。シリーズ読者にはうれしいことです。
また、今回も新たなキャラクターが登場しました。今後の活躍を期待しています。
「しゃばけ」シリーズは長く続いているためか最近は少々パワーダウンしている感じでした。
この本は最近の中では最もプロットが練られているみたいで、十分楽しむことができました。
どの話も人の心に潜むものを興味深く描いています。笑いと切なさも絶妙なバランスです。
読後も心地よく、ほのぼのとした温もりが残ります。一太郎は年とともに成長しています。
このまま成長して、いつか結婚したら妖たちとの関係はどうなるのか。今から心配です。
「たぶんねこ」畠中恵さんの、まだまだずっと続けてほしいシリーズです。

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「たぶんねこ」畠中恵
[C19703]