中学二年生の名倉祐一が部室の屋上から転落し、死亡した。
屋上には五人の足跡が残されていた。事故か?自殺か?それとも…。
やがて祐一がいじめを受けていたことが明らかになり、同級生二人が逮捕、二人が補導される。
閑静な地方都市で起きた一人の中学生の死をめぐり、静かな波紋がひろがっていく。
被害者家族や加害者とされる少年とその親、
学校、警察などさまざまな視点から描き出される傑作長篇サスペンス。
いじめがテーマなだけに読んでいる間中、不快な気分になりますが
内容はドキュメンタリーかノンフィクションかと思えるくらいリアリティに溢れています。
様々な視点から事件が語られていく中で、隠されていた事実が次第に姿を現します。
読みすすめるうちに事件は狭い町の人間関係にまで深刻な影響を与えていくのがわかります。
登場するのはどこにでもいる普通の人たち。特別な状況はひとつもないと思えます。
グループ内の子供たちはもちろん、それを囲む親たち、先生、検事、弁護士、記者、
町に住んでいて生活している人たち、それぞれの顔が浮かんで来るくらいの人物描写です。
いじめの原因が単純ではないことが明らかになるほか、生徒たちの幼くて危うい集団心理、
母親の我が子への執着、刑事や検察官による執拗な捜査、学校の保守的な対応、
教師間の食い違い、新聞記者の取材等、とにかく登場人物の描写が丁寧で素晴らしいです。
リアルで詳細な記述の積み重ねによって、いじめには相応の理由があること、
中学生は状況や集団に流されがちであること、大人は子供たちを理解できないこと、
どこでもこうした事件は起こる可能性があることを著者は説得力をもって示します。
いじめの被害者、加害者とは簡単に言えないくらいの背景で色々な事を考えさせられます。
読後感も後味も悪いけれど、久しぶりに一気に読めた作品でした。
「沈黙の町で」奥田英朗さんの、完成度の高い読み応えありの一冊です。

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「沈黙の町で」奥田英朗
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著者:奥田英朗
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中学2年の男子生徒が、部室棟から転落死した。転落した現場であるその屋上には、5人分の足跡があり、死亡した少年と同じテニス部の部員4人が、彼をいじめていたことを認めたため、14歳になっていた2人は傷害容疑で逮捕、13歳の2人は児童相談所へと送致となった。しがらみの多い地方都市に降って沸いた騒動に……
なんて...
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