クリスマスにもたらされるささやかな奇跡の連鎖―。有川浩が贈るハートフル・クリスマス。
•第1唱 オラトリオ
•第2唱 もみの木
•第3唱 コヴェントリーキャロル
•第4唱 もろびとこぞりて
•第5唱 ホワイト・クリスマス
冒頭でいきなりバイオレンス場面。何が起きてるのかと思っているうちに引き込まれます。
主人公の大和俊介は「エンジェルメーカー」という子供服メーカーに勤めていますが、
不況のため倒産。12月25日で閉鎖予定です。ここでは副業として学童保育を行っています。
預かっている児童の一人、田所航平は離婚目前の両親が別居中で母親と二人暮らしです。
航平は両親が仲直りしてほしいと思っていて、父親の勤め先へ行ってみようと考えました。
ようやく会いに行くと、父親が働いている整骨院が地上げ立ち退きを迫られていました。
大和と「エンジェルメーカー」の社員達、航平とその両親、地上げするヤクザ達が登場人物。
職場の個性豊かなメンバーたち。日常会話のやり取りやツッコミが、とても面白いです。
大和と元カノとの関係と展開は、有川浩さんらしいアクセントと感じられました。
そうした部分については、若い女性向けの恋愛小説のジャンルにも近いと思います。
大和の完璧な立ち振る舞いと行動力は、過去の辛い経験を乗り越えてきたゆえの怪我の功名。
ヤクザ者の立場の展開は新鮮。勧善懲悪でない所に現実味があり素直に感情移入できました。
ただし、後半、いきなりハードボイルド系のサスペンスタッチになってビックリです。
誘拐という展開は無理を感じました。そのドタバタの終焉も唐突で唖然としてしまいました。
そうした揺れ幅の大きいストーリーですが、ちょっと想像力を広げてみることにしました。
自分や身の回りに置き換えてみると身につまされます。自分の中に刻まれる言葉の数々。
恋人や親子、夫婦の絆がテーマの幸せな気持ちになれるハートウォーミングストーリーです。
家族や人生に悩める人もそうでない人も楽しめ、泣けて、少し優しくなれます。
そういえばNHKのBSプレミアムで優香さんと三浦貴大さん出演でドラマ化もされました。
はてなキーワードによるとキャロリングとは、クリスマス・イブにキリストの生誕を
賛美歌を歌って告げ知らせること。また別のネット記事によると具体的な行動としては、
クリスマス・キャロルを歌いながら街を練り歩くこと…らしい。です。
「キャロリング」有川浩さんらしい作品で、クリスマスシーズンにふさわしい一冊です。

楽天からも購入できます。

「キャロリング」有川浩
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