夏流城(かなしろ)での林間学校に初めて参加する光彦(てるひこ)。
毎年子どもたちが城に行かされる理由を知ってはいたが、
「大人は真実を隠しているのではないか」という疑惑を拭えずにいた。
ともに城を訪れたのは、二年ぶりに再会した幼馴染みの卓也(たくや)、
大柄でおっとりと話す耕介(こうすけ)、
唯一、かつて城を訪れたことがある勝ち気な幸正(ゆきまさ)だ。
到着した彼らを迎えたのは、カウンターに並んだ、
首から折られた四つのひまわりの花だった。
少年たちの人数と同じ数――不穏な空気が漂うなか、
三回鐘が鳴るのを聞きお地蔵様のもとへ向かった光彦は、
茂みの奥に鎌を持って立つ誰かの影を目撃する。
閉ざされた城で、互いに疑心暗鬼をつのらせる卑劣な事件が続き……?
彼らは夏の城から無事に帰還できるのか。短くせつない「夏」が終わる。
前作の「七月に流れる花」が夏の城に集められた女の子たちの話であったのに対して、
この作品は反対側に集められた男の子たちのお話です。
前作は、どこか浮世離れした、夢のようなひと夏の寓話的な印象でしたが、
こちらは既になぜお城に集められたのか理由や背景が分かっている前提で書かれています。
前作の不可解部分が説明されているので、セットとして読むことで理解できます。
男の子たちに危害を加えようとする「もう一人」の存在や、「みどりおとこ」の謎。
それらについてより深く掘り下げられています。
前作にも登場するリーダー的存在の蘇芳のいとこ、光彦が主人公で蘇芳も度々登場します。
「夢のようなひと夏」が、ふんわりしているようで実は女の子の強さかなぁと思いました。
本作は男の子たちが通過儀礼を経て少し大人になる「きっちりターニングポイント」の印象。
少年たちの思春期特有の心情、時に死と向き合うことを上手に描いてきた恩田陸作品共通の
特徴が現れています。全ての出来事が終わった後の少年たちの成長が瑞々しかったです。
「八月は冷たい城」恩田陸ワールド。いつ鐘が鳴るのかドキドキ。2冊セットで楽しみました。

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